金正日総書記誕生56周年/現地指導に見る経済建設の展望(上)
朝鮮人民は2月16日、金正日朝鮮労働党総書記推戴後初めて、総書記の誕生56周年を迎える。総書記は、94年7月8日の金日成主席逝去以降これまで、党と軍隊、青年組織などへの精力的な現地指導を行いながら、国政全般を指導してきた。現地指導を通じた総書記の経済建設に対する戦略、成果について見た。(基)
逆境を順境に転換するカギ/軍人が自力更生の手本示す
頼もしい主力軍
朝鮮労働党中央委員会機関紙である労働新聞の報道を集計すると、総書記の現地指導は主席の逝去以降、延べ162回(3日現在)にわたった。
総書記の現地指導の内容について、同紙96年10月28日付は @主席と共に歩んだ道程の継続 A朝鮮式社会主義を守る最前線に対する領導 B革命と建設で一大転換を起こすための領導――であると指摘し、そこには朝鮮革命を導くための「戦略的意図」が込められていると強調した。
とりわけ総書記が95年に行った現地指導(計30回)のうち約半数(14回)が軍関連であったが、翌96年には全体の約7割(54回のうち38回)に増えた。
その内容は、前線部隊、後方部隊への訪問・視察、人民軍協奏団などの公演観覧、軍事大学の訪問、兵士らが担当している経済建設現場への視察など、多岐にわたっている。
労働新聞97年4月25日付は人民軍隊について、「祖国防衛においても社会主義建設においても突撃隊」であると指摘し、同年12月23日付の同紙では「革命の主力軍」と強調した。人民軍隊が行った経済建設について見てみよう。
総書記は、96年6月10日と9月15日の2回にわたって兵士らが建設を担当している江原道の安辺青年発電所(旧金剛山発電所)を視察し、人々が革命的軍人精神を学ぶよう強調した。
革命的軍人精神とは、@与えられた課題を最後までやり抜く絶対性と無条件性 A不利な条件、困難な中でも自分の力で解決していく自力更生――などを内容とする。
同発電所建設で兵士らは、調整地の堤防と地下水路の壁に使う莫大な量のコンクリートを自力で調達し建設を進めている。同発電所工事は第1ステップ(10万キロワット)が終り現在、第2ステップを進めている。電力問題を解決すれば、国の基幹産業の水準を高めることができる。
積極的な生活気風
また総書記は、6月10日に同発電所を視察した翌11日には人民軍第853軍部隊を訪問した。この時から軍幹部だけでなく、党幹部も軍部隊視察に共に同行していることが注目できる。同行したのは桂応泰、金己男、金容淳の各書記。
労働新聞によると、同部隊は主席の遺訓を貫徹する活動で多くのことをした部隊で、総書記は兵士らが自力更生の精神で自力で新しい技術機材を創案導入したことを評価した。
「自力更生の精神」とは、同年元旦の労働新聞、朝鮮人民軍などによる共同社説で強調された「『苦難の行軍』精神」の一つである。この年の共同社説で「苦難の行軍」が指摘されて以来、労働新聞など共和国のマスメディアでは、「自力更生の精神」で社会主義建設を推進してこそ、「行軍」を乗り越えられると強調してきた。
共和国がここ数年にわたる「苦難の行軍」を遂行しなければならない要因は、鋭い政治軍事的緊張、帝国主義勢力の執ような経済封鎖、前例のない自然災害(96年の共同社説)のためであるが、その一時的な難局を積極的に打開し、逆境を順境に転換させるカギが、自力更生の精神(=革命的軍人精神)を発揮して経済建設を推進することである。
その一方で兵士らは昨年、春の田植えから秋の収穫時まで農業に動員され、農業生産で新たな前進の土台を築いた。こうした人民軍の活動は人民に、「人民軍隊の決死貫徹の精神で(経済建設を)推進していかねばならず、自力で暮らしを整えていくうえでも、人民軍隊の積極的な生活気風を学ぶべき」(労働新聞97年5月19日付)ということを裏付けている。
こうして見ると、総書記の軍関連の指導には、前線部隊視察など自衛のための国防力強化だけでなく、経済建設を推進するうえで主力軍にする戦略的意図が込められていると言える。
朝鮮人民軍は今、「祖国防衛も、社会主義建設もわれわれがすべて引き受けよう!」のスローガンを掲げて建設現場で勤労の偉勲を立てている。
発電所、牧場、温室を建設/全国模範活動家大会で経験一般化
石畑整備し野菜栽培
総書記は、人民軍第853軍部隊祝賀訪問(96年6月12日)から13日後の同月24日、人民軍第770軍部隊の後方基地を訪れた。ここには桂応泰、崔泰福の両書記が同行した。 同所は、野菜栽培のための600メートルに及ぶ太陽熱温室、浴場や養魚場などを新設した所である。とくにこの温室は、石畑を整備して建設されたものだ。総書記はそれを見て、党の要求ならばいかなる難しい課題も遂行するのが人民軍の革命精神である、と評価した。
労働新聞は、総書記が温室を見て回る姿や、そこで栽培された野菜を見る姿など3枚の写真を大きく掲載し、自力更生で野菜を栽培するための太陽熱温室を、建設すべきことをアピールした。
平壌精米工場のファン・ジョンマン支配人は、今年初め本社記者に対し「金正日総書記は昨年初め、人民の食生活を向上させるためには、軍隊を見習い、すべての単位で太陽熱温室を作ることを全社会的に行っていかねばならない、と述べた」と語った。
労働新聞97年4月7日付が「こんにちの『苦難の行軍』で人民が学ぶべき模範は人民軍であり、試練を乗り越える原動力は革命的軍人精神である」と強調しているように、総書記は、人民軍隊が自力更生で行っている経済建設を手本として、それを全社会に広めようとしている。
総書記はほかにも、兵士らが作った月飛山発電所(96年10月28日)、松岩牛牧場(97年10月21日)や九月山文化遊園地(同年9月23日)、動植物の標本と美術作品(同年3月4日)なども視察した。
発電所建設には電力をより多く生産して工場をフル稼働させ、牧場建設には牛を育てて人民の食問題の解決を図り、遊園地建設には人民の娯楽と観光地として、標本や美術品制作には子供らの教育に役立てるなどの、人民の文化生活の水準を向上させようとする総書記の意図が込められているのだ。
「苦難の行軍」の陣頭に
共和国は「苦難の行軍」を推進する過程で自力更生を呼びかけてきたが、今年1月29、30の両日、平壌で全国自力更生模範活動家大会が開催された。
大会では、その間の成果と経験を総括し、自力更生の精神で最後の勝利をめざす強行軍を促進するうえでの課題と方途を討議した。
強行軍を行う目的は、経済問題を決定的に解決し、人民生活を向上させること」(労働新聞1月8日付)にある。人民生活向上のための総書記の直接的な現地指導は、昨年まで労働新聞などによる公式報道はなかった。しかし、年始に全国自力更生模範活動家大会が開かれたことは、総書記の軍関連への現地指導を通じて、朝鮮人民が人民軍の発揮した自力更生の精神を学び、経済建設を実践を通じて貫徹してきた表れと言える。
同大会で報告をした金己男書記は、「金正日総書記が『苦難の行軍』の陣頭で実践的な模範を示して、全党、全軍、全人民を勝利の道へと導いた」と強調した。
経済建設の過程には総書記の精力的な指導の成果があったのである。