自力更生の「ショーケース」/平壌精米工場
共和国では「苦難の行軍」のここ数年間、自力更生をスローガンに、市や郡は自力で住民生活を保障し、工場や農場は自力で生産を保障するたたかいを繰り広げてきた。1月29〜30日には平壌で全国自力更生模範活動家大会が開かれ、32人の代表が自力更生の様々な取り組みについて討論したが、こうした取り組みはすべて金正日総書記が「1つの単位で模範を創造し、それを一般化する方法で」(金己男書記の大会報告)広めたものだ。そうした模範単位の1つ、平壌精米工場(平壌市万景台区域、従業員数470人)では、廃タイヤから精米機用のローラーを作って工場を正常稼働させる一方、敷地内の空き地を利用して野菜やキノコ、果樹、豚、魚などを育てて従業員の豊かな食生活に寄与している。自力更生の取り組みの「ショーケース」とも言える同工場には、見学者が絶えないという。 (東)
部分自給し正常稼動/廃タイヤを活用
平壌精米工場は、米穀、雑穀合わせて年間10万トンの加工能力を持つ共和国最大の穀物加工センターだ。平壌市内で配給される穀類の加工は、すべてここで行っている。
同工場の精米機は、ゴムのローラー2つが米粒を挟んで回転しながら精米する仕組みになっている。ローラーは1週間ほどで駄目になる消耗品だが、原料の生ゴムは輸入品。外貨不足のため、供給は滞っていた。
しかし、工場を止めて市民の食生活に支障をきたすわけにはいかないと、同工場では94年9月からゴムのローラーの自給に取り組んだ。1年間の試行錯誤を経て、廃タイヤを粉砕、溶かしてローラーを作る技術を開発し、機械も完成させた。現在、この「自家製ローラー」で精米を行っている。
一方、工場の建物の屋根が鉄板でできていることに目をつけ、セメントと砂で代用瓦7万枚を作って交換。1500平方メートル分の鉄板を手に入れ、設備の補修や付属品生産にあてた。
「自力更生と口で言うのは簡単だが、実行するのは難しい。ゴムのローラーを自分たちで作ろうと提案した時、そんなこと無理だと言う人もいた。私は、困難を前にただじっと耐え忍んで飢え死にするのか、それとも国でやろうとする通りに努力するのか、どっちがいいのかと訴えた」
工場党委員会のキム・チュンシク書記(56)は赴任したばかりの94年9月24日、ゴムのローラーの自給を決めた会議が、今も忘れられないと言う。
「私たち責任者が先頭に立って努力し、国の方針を徹底的に貫徹すれば必ずうまく行く」
従業員に副食物供給/果物、野菜、肉、キノコなど生産
ここ数年間、自然災害により農業が大きな打撃を受けた共和国。復旧に関しては急を要する主食の穀類が優先されているため、どうしても野菜や肉などの副食物が不足する。そこで、副食物は農業部門以外の各単位でできるだけ補う方針が取られている。これも自力更生の一環だ。
こうした方針に従い同工場ではまず、11ヘクタールの敷地という敷地にカキ、アンズ、ナツメ、ブドウなどの果樹を植えた。その本数は、従業員1人当たりカキが2本、アンズは1本以上、ナツメ、ブドウはそれぞれ4本にもなる。昨秋から収穫できるようになり、従業員1人当たり7.5キロのアンズをはじめ各種の果物を供給した。
また昨年初から、工場敷地の裏山の岩盤を削って180平方メートルの温室を建設し、12月末には春菊とサンチュを全従業員に1キロずつ供給したという。屋外にも畑を作り、ジャガイモや白菜などを作っている。
昨年4月からは、キノコ生産も始めた。共和国で開発された安辺クロヒラタケという種類で、昨夏は800キロ収穫して従業員に供給。栄養価も高く、炒め物にするとおいしいと好評だ。
キノコの種菌を、もみ殻とトウモロコシの芯を合わせたものに植え込んで栽培するのだが、精米工場なので、もみ殻とトウモロコシの芯に困ることはない。
さらに、キノコ栽培が終わった後のもみ殻とトウモロコシの芯はとてもいい豚の餌になるので、豚小屋も設け、昨年末には従業員1人当たり5キロずつ豚肉を供給した。また豚の排泄物は、魚の餌になる。そこで1000平方メートルの養魚場も建設し、1万5000尾のフナとコイを育てている。
「この3年間、自力で問題を解決するための対策を講じてきた。温室や、キノコは、方針が出るとすべて実行。とにかく国でやろうということはすべてやってきた。その結果、資本主義諸国の包囲の中、国が経済的に苦しい状況にあっても工場はつねに正常に稼働しており、従業員が食べ物に困ったこともない」
工場党委員会のキム・チュンシク書記は誇らしげに言った。