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新潟・北東アジア経済会議98/共和国代表団参加


羅津―先鋒の重要性認知/通信、輸送などインフラ整備進展示す

 新潟・北東アジア経済会議98(主催=新潟県、新潟市など)が17〜19日、新潟市内で開かれ、2年ぶりとなる共和国代表団(4人)をはじめ中国、ロシア、モンゴル、南朝鮮、日本と米国、国際機関の代表ら約350人が参加。羅津―先鋒自由経済貿易地帯(以下、羅―先地帯)開発を担当する対外経済協力推進委員会(対経協)の金應烈副委員長、金日成総合大学の金秀勇教授がそれぞれパネリストとして壇上で発言し、関連行事「北東アジアの観光資源紹介」では、対経協の金型吉上級研究員が羅―先地帯の観光資源についてスピーチした。なお、代表団一行は20日、総聯中央を訪問し、許宗萬責任副議長、崔秉祚副議長らと会見。21日に帰国した。(東)

 

タイの進出企業が報告

 新潟県と(財)環日本海経済研究所が中心となり、北東アジア地域の開発促進の道を探ろうと開いてきた同会議。現在の名称になってからは3回目となる。96年以来、2年ぶりに参加した共和国代表団団長の金應烈・対経協副委員長は、「共和国の羅―先地帯が豆満江地域開発、北東アジア経済協力における要として認知されたことを感じた」と感想を述べた。

 事実、どのパネリストの発言でも、羅―先地帯の重要性が既成事実化していた。とくに、タイ・ロックスレー社のハンチャンラッシュ筆頭副社長の羅―先地帯進出に関する報告(第1セッション)は、それを印象づけた。同社の子会社、ロックスレー・パシフィック社は共和国と合弁で北東アジア電話通信会社を設立し、地帯内における総合的な通信サービス業を展開している。

 96年9月、現地で開いた投資セミナーの成功を機に、羅―先地帯開発は実践段階に移行した。とくにインフラ整備の進展状況は、第2セッション「北東アジアの輸送ネットワーク―より自由で活発な往来を目指して」における金秀勇教授の報告でも明らかにされた。金教授は、羅―先地帯の輸送ネットワーク構築事業の現状について紹介し、羅津港を近代化してコンテナ専門取扱港として機能させるための事業、羅津―中国間の道路、鉄道を通じたコンテナ輸送を円滑化するための事業、羅津―ロシア間の鉄道貨物輸送を活性化するための事業が活発に行われていることについて述べた。

 

域内貿易発展に寄与

 「北東アジア地域の経済協力と交流の必要性についてはすでに認識されており、地域内の各国は2国間、もしくは多国間の域内協力・交流を志向している。こうした条件で、協力と交流を発展させるための実践的かつ効果的な方途を模索し、一つ一つ着実に実現していくことが重要だ」

 総括セッションで、金副委員長はこう訴えた。

 北東アジア地域諸国の特徴は、社会制度と理念、経済発展の水準とモデル、領土の大きさと人口、文化的な差異が大きいこと。制度と理念の共通性、経済発展水準と国家の規模などの類似性に基づくEUやASEANなど他の地域ブロックとは大きく異なる。そのため、「北東アジア諸国間の地域的経済協力は、各国の経済政策の一体化を前提とする地域共同市場のスタイルではなく、いくつかの可能な協力分野、対象を選択し、それを拡大していくスタイルで実現してくことが現実的」(金副委員長)だ。国連も後押しする豆満江地域開発計画が、その対象として相応しいということはすでに議論し尽くされた周知の事実であり、共和国はそのためにも羅―先地帯開発に力を注いでいる。実際、同地帯内に設立された100余の外国投資企業のうち、域内諸国の投資件数は約70件で、全投資件数の7割を占めているという。

 また、地帯国境沿いの元汀では朝中共同の国際市場が活況を呈しているともいう。こうした試みが発展していけば、地域間の貿易交流の拡大にいっそうはずみがつくだろう。

 

羅津―先鋒地帯 輸送網構築の近況

 @昨年、クレーン引き揚げ能力を10トンから30トンに増強するなどコンテナの荷役設備を改善し、羅津港のコンテナ処理能力を年間3万個に拡大

 A羅津―元汀間の道路拡張工事が本格化

 B昨年末より羅津―南陽(中国)間の直通貨物列車を運行し、コンテナ年間6000個を運搬できる輸送ルートを開設

 C羅津―釜山間のコンテナ定期運航を拡大する一方、羅津―束草(江原道)間、羅津―釜山―福岡間の新たな貨客船航路を開設する案件の検討に着手

 D羅津―ロシア間の鉄道貨物輸送活性化のため、雄尚港を通じたロシア産原木の中継輸送再開へ交渉中

 E昨年8月から羅津―図們(中国)間の観光専用列車が運行開始

 F羅津―延吉(中国)間のヘリ航路開設準備中

 

資金――ADBの協力がカギ

組織――既成の枠組み活用を

 第1セッションのテーマは「北東アジアと東南アジア―東南アジアから何を学ぶべきか」であった。両地域の違いを念頭に置いたうえで、類似するプロジェクトである豆満江地域開発計画とメコン川流域開発を比較するなど、興味深い議論が交わされた。

 アジア開発銀行(ADB)プログラム東局の上級エコノミスト、デビット・グリーン氏によると、豆満江とメコン川の最大の違いは国際金融機関の関与。メコン川では資金調達にADBが協力しており、それが、民間投資を助成する公的保証となっている。

 北東アジア経済協力の要となるべき豆満江地域開発でネックとなっているのは、やはり資金だ。現在、関係6ヵ国のうちADB未加盟の共和国とロシアが加盟へ向けて積極的に動いており、加盟が実現すれば明るい材料となろう。

 一方、会議では北東アジア地域の経済協力のための常設機構が必要だとの提言が多くなされたが、豆満江開発に限って言えばすでに朝、中、ロによる調整委員会と、ここにモンゴル、南朝鮮を加えた諮問委員会が存在し、活動している。この枠組みをもっと有効に活用すべきだろう。また依然消極的な日本の参加が求められる。この点については環日本海経済研究所の金森久雄理事長をはじめ、多くの識者も指摘していた。

 南朝鮮をはじめ、アジア諸国がかつてない経済危機に襲われている中で開かれた今会議。しかし、「各国が経済危機に苦しみながらも、地域間協力によってマイナス状況をプラスに転じていこうという共通認識を持っていることが示された」(平山征夫・新潟県知事、会議終了後の記者会見)。