共和国のスポーツ―現状と展望
インタビュー/共和国オリンピック委員会 張雄書記長に聞く
国際オリンピック委員会(IOC)委員である共和国オリンピック委員会の張雄書記長(59)に、共和国でのスポーツの現状と今後の展望などについて聞いた。同書記長は2月1〜8日、長野市で開かれたIOC総会に参加した。(高)
まずアジアでトップに/国際大会に積極参加
――共和国のスポーツ行政、振興策の現状は
スポーツ科学の発展と、大衆レベルからの人材育成が、現在のスポーツ行政の中心的な課題だ。
3年前に体育科学院を新設した。傘下には体育科学研究所と体育器材研究所、体育科学病院があり、各研究所では200人以上のスタッフが研究に取り組んでいる。また体育大学卒業生を研究コースに再度送るなど、指導者育成のレベル向上にも努めている。
現在、どの種目も選手の世代交替期に入っており、若い選手の育成が急務だ。そこで、学校における体育教育も重視している。各師範大学ではスポーツ理論・実技指導の専門知識を教えている。人民学校や高等中学校の教員が適切な体育指導を行うことで、より多くの人材が育つ大衆的な土壌を作るためだ。
また最近、とくにバスケットボールの普及に力を入れており、学校や体育団ごとにクラブを作っている。強い体を作るバスケはとくに成長期の子供たちの身長を伸ばすのに効果的で、敏捷性の発達にもいい。器材が比較的簡素で、狭いスペースで試合ができるという点も共和国に向いている。
――競技のプロ化と選手の海外進出は
共和国では80年代後半から、ボクシングやレスリング、サッカーなど、人気競技のプロ化を検討してきたが、その第1弾がプロボクシング(92年)だった。現在、共和国プロボクシング協会はWBA(95年)やWBC(97年)などにも加盟しており、所属選手は300人を超す。中には世界王座を狙える者もいる。今年から、国際的な活躍が本格化すると思う。
バスケットボールのリ・ミョンフンは、米国の対共和国制裁措置が緩和されれば、すぐにもNBA入りができるはずだ。彼は、96年8月に台湾で開かれた第19回ジョンズカップ国際バスケットボール大会に共和国が出場した際に、米国(オールスターチーム)との対戦で1人で27得点し、NBA関係者の注目を集めた。マイアミ、トロント、ニュージャージーの3チームからスカウトされており、昨年からカナダのオタワでトレーニングに励んでいる。
――アマチュアスポーツの国家代表クラスの現状と展望は
ウェイトリフティング、柔道、レスリングなどの水準は高い。とくに女子の柔道、サッカー、卓球、ウェイトリフティング、バスケットボールなどは国際大会でも通用するだろう。
女子卓球ではアトランタ五輪にも出場したキム・ヒョニ、トゥ・ジョンシル、キム・ヒャンミをはじめ、若い層の伸びが目覚ましい。来年4月の世界卓球選手権大会を前に猛練習中だ。
女子バスケチームは現在、ユーゴスラビア、ブルガリア、ロシアなどのチームを招いて対戦し、満足の行く結果を出している。
来年には米国で女子サッカーのワールドカップが開かれる。アジア予選を上位で突破した共和国の女子選手たちは、本戦を前に万全の準備を整えつつある。
共和国はアトランタ五輪で金2、銀1、銅2のメダルを獲得した。大きな成果と言えるが、満足したわけではない。まずアジアでトップに立つことに力を集中し、そのうえで世界を狙うというのが戦略だ。
――今後の日程は
12月にタイ・バンコクで開かれる第13回アジア競技大会(36種目)には大規模な選手団を送る。10月に中国で開かれるアジア体操選手権など各種目のアジア大会にも積極的に出場する予定だ。10月にタイで開かれる第31回アジアユースサッカー選手権(予選は6月)や第8回アジア少年サッカー選手権(カタール)も重視している。
来年からは各種目別にシドニー五輪の予選が始まるが、共和国の選手たちは在日同胞の期待に応える活躍をするだろう。2000年のシドニー五輪では、バルセロナ、アトランタを超えるメダルを獲得すると確信している。