視点
「母国語は自分の心から消し去ることができない大切なもの」
アイルランドの歌手エンヤが、最近のNHKテレビのインタビューでこう語っていた。彼女には母国語の歌が多い。母国語とはアイルランド語。彼らが言葉を大切にするのは、800年間もイギリスの植民地だったことに起因する。その過程で「公用語」となった英語は今でもアイルランド語と共に主言語だ。
アイルランドを自由国と認めた「英・アイ条約」が結ばれた1921年、詩人、文学者らによる文芸復興運動が起きた。その中心人物で詩人のダグラス・ハイドらはゲール語(アイルランド語)連盟を創設、その保存と使用拡大のために尽力した。「母国語と母国の慣習を捨ててしまえば、われわれはイギリス人とは違う、別の国の人間だということを世界の人に認めさせることができない」とハイドは語った。
自らのアイデンティティーを主張するためにも母国語は重要な手段だが、在日同胞の社会では世代交替が進み、朝鮮語を話せる人も年々少なくなっている。
そのため本紙は「朝鮮語を学ぶ」を毎号掲載している。ある支部委員長からは「民族心を守るための良い資料。パンフにしてほしい」など要望も寄せられた。
西東京南部支部のある同胞は、2人の孫とウリマルで会話をするために、毎号、丁寧にスクラップしているという。親から子へ、そして孫へ、民族の心が連綿と受け継がれていくためにも、母国語は欠かせない。 (聖)