午後夜間学校・土曜児童教室/民族に触れるもう一つの学校
日本学校に通う同胞児童のための「午後夜間学校・土曜児童教室」が増えている。これらは日本の小学校に通っている同胞児童に、朝鮮の言葉と文字、歴史、地理、文化と風習を教える総聯の非正規的な民族教育網の一つだ。児童教室を契機に朝鮮学校に編入する児童も少なくなく、今年にも、東京・大田支部児童教室の受講生が朝鮮学校への編入を決めた。児童教室の内容と現状について見る。(道)
すべての同胞児童が対象
「午後夜間学校・土曜児童教室」は、放課後や学校が休みの土曜日(週休2日制の学校のみ)を利用して行われている。民団、未組織、日本国籍も含め同胞児童すべてが対象になる。
現在は各地の総聯支部事務所や朝鮮初中級学校、朝銀支店などで場所の提供を受けて運営されており、受講生も年々増えている。児童教室が全国規模で運営されるようになったのは、「在日同胞子女の民族教育をさらに発展させるための各界各層代表者会議」が開かれた96年から。それまでも一定の地域・単位で自発的に行われていたが、「代表者会議」が全在日同胞に呼びかけた「民族教育をすべての子に!」というアピールに沿って、朝青中央が管轄し各地で統一的に運営され始めた。
各地域の朝青員や現役教員らが講師を担当。教材は朝鮮学校の初級部1〜6年の教科書をもとに、朝鮮語と朝鮮の歴史、地理、音楽、図工と総合的な内容で編成され、初級・上級に区分されている。
期間は毎年4月から翌年の2月までで、運営日数は地域によって異なるが、大体が月2回以上だ。キャンプや運動会、文化公演、朝鮮学校の見学、生徒との交流会など、多彩な課外授業も行っている。
今後は児童教室を、日本学校や各市町村に設けられた公共施設など、外部施設でも開いていく考えだ。
川崎初中で体験入学/「先生が優しく、楽しい」
朝青神奈川・川崎支部の児童教室「ミレ(未来)」は、毎週木曜日午後5時から1時間、川崎朝鮮初中級学校の教室で授業を行っている。2月28日には、97年度の閉講式を兼ねた同校への「1日体験入学」が行われた。
年間活動の締めくくりとして行われている「体験入学」は、児童らが生徒と交流を深め、朝鮮学校を知ることで朝鮮人としての自覚を持つようにと、昨年、初めて企画された。今回は昨年も訪れた2人を含む7人が参加した。
まず初級部1年から6年までの教室を順に回り、国語や日本語の授業を参観。朝鮮語で行われる授業に少し驚いたようだが、教科書やノートをのぞき込むなど興味津々な様子だった。チマ・チョゴリに着替えて記念撮影したあと、4年生のクラスとドッジボールやなわ跳び、民俗遊びの「ユンノリ」などを楽しんだ。
「みんな日本語も朝鮮語も上手で驚いた」というのは白淑栄さん(4年)。「児童教室で朝鮮語やチャンゴを習ってるけど、ソンセンニムも優しいし、とても楽しい。早くみんなのようにうまく話せるようになりたい」と嬉しそうだった。
講師の姜珠淑教員(28)は「朝鮮学校に通う児童に比べて、日本学校に通い『民族』に触れずに育つ同胞児童が多いのが現状だ。『ミレ』は民族に触れるもう一つの学校として、授業も学校で行い自然に民族教育に接するようにしている。その過程で児童自ら朝鮮学校に行きたいと思ってくれればなおさら嬉しい」と話していた。