続・高麗青磁への誘い10選 申載天@/青磁牡丹文輪花鉢
鉢は浅く開いた形で、口縁はへら目を入れて六花形にしてあり、外側面には口縁の刻みごとに縦の筋を入れてある。
内側面いっぱいに大きな花をつけた牡丹の折枝を浮彫り風に表し、花と葉の文様はその輪郭にごく細い線彫りまで丁寧に加えてある。
このような技法の浮彫り文様はおそらく型押しで表した後に線彫りを加えたものと思われる。
澄んだ淡灰青緑色の美しい釉薬が薄くむらなく施され、文様の境目には厚くかかり文様が浮き上がって見えるため逆形効果が一段と高まっている。
一輪の牡丹を鉢の内側面いっぱいに写実的に表した奇抜ともいえる意匠の見事さ、そして美しい釉色の肌等、深い印象を与える翡色青磁最盛期の作品である。
牡丹は私たちの先祖たちが大変好んだ花で、高麗、李朝の陶工たちも約1000年の長きにわたり陶磁に描き続けてきた。
この一輪の牡丹に見入る時、何故か現代的な感覚がして、約900年の昔の無名の陶工の息吹が身近く感じられ、私に何か語りかけてくるような気がする。(12世紀前半、口径19センチ)