視点
2年前の1996年7月に羅津―先鋒自由経済貿易地帯を訪れた時、先鋒港に中国のタンカーが停泊していた。朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)がチャーターした同船は重油を積んできたという。この重油が供給されている先鋒火力発電所の煙突からはもうもうと煙が出ており、間違いなく重油が提供されていることを改めて感じたものだ。
だが最近、資金問題などを理由に重油提供が滞っている。
94年10月の朝米基本合意文によると、米の主導下で2003年までに軽水炉2基を共和国に提供し、1号基の納入まで代替エネルギーとして毎年50万トンの重油を供給することになっている。共和国側は黒鉛減速炉と諸関連施設を凍結し、究極的には解体する。
共和国側は公約どおり原子力施設を凍結。1月に訪朝したカール・レビン米上院議員も「燃料棒の処理はジュネーブ核合意のとおりに履行されている」と語っている。
にもかかわらず米国側は不誠実な対応に終始している。共和国外交部スポークスマンが7日、「使用済み核燃料棒の保管作業を推進できない」と警告するのもうなずける。4月末に日本、南朝鮮を訪れたオルブライト米国務長官は2000万ドルとされる重油供給費用の負担を求めた。
朝米基本合意文の履行は、単に2国間の問題にとどまらず、朝鮮半島、そして東北アジアの平和と安定につながる。日本にとっても国益となるプロジェクトへの積極的参加が望まれる。 (聖)