特集//青商会ウリ民族フォーラム98・東京
輪郭見せた新しい力のネットワーク
9日、東京で開かれた青商会ウリ民族フォーラム 98は、第1部のパネルディスカッション「豊かな同胞社会のために」、第2部のチャリティーコンサート「この笑顔を応援します」の2部仕立て。21世紀を見据えて活発な議論が交わされた第1部、出演者と観客が一体になった楽しく、充実感あふれるステージが繰り広げられた第2部を通して、青商会は結成から3年間、築いてきた新しい力のネットワークの輪郭を同胞社会に示した。(道、東)
第1部パネル討論「豊かな同胞社会とは」
議論から行動へ/個人の蓄積、社会に還元し共有
1部のパネルディスカッションのテーマは「21世紀へのメッセージ―豊かな同胞社会とは」。
青商会は95年の結成当初から「豊かな同胞社会のために」をスローガンに掲げているが、「豊かさ」とは一体何か。パネルディスカッションでは、その「漠然としたイメージ」を追求し、青商会メンバーの活動舞台となる21世紀の同胞社会で、若い同胞企業人のあるべき姿について活発な意見が交わされた。
商工連の呉州棟商工部長は、企業人にとって豊かさとは、経営を成功させる物質的な豊かさと、それを個人の枠に止めず同胞社会に還元させる精神的な豊かさの2つだと指摘。その実例として株式会社叙々苑の朴泰道社長の活動を上げた。
朴社長は24年間、必死の努力を積み重ね、年商81億円という確固たる経営地盤を築いた。昨年には「朝鮮料理店経営者集中セミナー」を全国規模で開き、他の同胞企業人らに自ら築いた経営ノウハウのすべてを惜しみなく披露した。そうすることで、豊かさを同胞社会に還元し、「そこに自分の生きがいを感じている」(朴社長)。
朝鮮大学校政治経済学部の呉民学講座長は、経済学的な「豊かさ」の概念とその基準に言及。そして、入居差別や私立学校並の教育補助が実施されていないなど差別が多く残る日本社会で、普通の状態でも日本人より不利な状況にある同胞は、豊かさについてもっと深刻に考えるべきだと強調。さらに豊かさとは個人の豊かさと、個人を取り巻く家族、同胞社会、祖国、日本社会など環境の豊かさが揃って初めて本当の豊かさと言えると述べた。
それぞれの発言では表現こそ違ったものの、「豊かさを個人の枠に止めず同胞社会に還元する」ということが強調されていた。さらに討論では、同胞が民族性と主体性を堅持し、豊かな同胞社会を築いていくためにも、青商会がさらなるネットワーク構築のため積極的に活動すべきだということが確認された。
青商会中央幹事会の宋元進直前会長は、その点に触れながら、会員がそれぞれ持っている企業理念やポリシー、ノウハウを、青商会というテリトリーの中で還元し、さらに青商会が地域の同胞社会に還元することによって、全般的に豊かな同胞社会が築かれつつあるのではないかと語った。しかし「豊かさをいくら論議しても、行動に移さなければ空論に過ぎない。大切なのは豊かさをどう実行するかだ」(呉講座長)。参加者らは最後に実践でこそ、豊かな同胞社会を築いて行けることを確認し合った。
福岡青商会の金永浩会長は「豊かな同胞社会を築くためにはネットワークを広げることが何より大事だ。地域にはまだたくさんの同胞が埋もれているはず。そのような同胞を1人でも多く見つけ出し、ネットワークを少しずつでも広げていきたい」と話していた。
第2部コンサート「この笑顔を応援します」
チャリティーの趣旨に共感/家族ぐるみ、楽しんで
豊かな同胞社会を築くため、未来を担う同胞の子供たちへの応援歌として企画された2部のコンサート「この笑顔を応援します」。客席には家族連れが多く、とにかく子供の姿が目についた。
もちろん舞台上でも、都内の朝鮮学校初級部生徒らの大合唱「楽しい通学路―バスに乗って電車に乗って」、可愛くコミカルな舞踊「夢はサッカー選手」など、子供たちの元気いっぱいの姿が楽しかった。
また子供たちの父母である青商会世代も奮闘し、蝶ネクタイとタキシードで決めた東京青商会の若いアボジらの渋いコーラスとリズムに乗ったユーモラスなステップ(重唱「父の願い」、「黄金の木、リンゴの木」)、華やかなチョゴリを身にまとったオモニ合唱団の美しいハーモニー(子供たちへの愛情を込めた重唱「花のように微笑んで」)は大きな拍手を浴びていた。
東京朝鮮歌舞団、文芸同東京舞踊部、民族器楽重奏団ミナクなどの同胞芸術家・芸術愛好家による見ごたえある演目もうまく配分され、東京朝鮮吹奏楽団による伴奏が全体を引き立てた。農楽など一部の演目には朝青員や東京日校学生会も出演協力をした。
このコンサートは元来、同胞障害者家族のネットワーク「ムジゲ会」のチャリティーコンサートとして企画されたもの。ビデオスクリーンを使ってムジゲ会が紹介され、日本の芸能人や文化人からの激励メッセージが披露された。さらにウルトラマンや着ぐるみの動物たちが登場し、招待席に座るムジゲ会の子供たちを喜ばせる一幕もあった。
食糧支援のために訪朝し、3日前に帰ったばかりだという沖縄のミュージシャン、喜納昌吉さんもチャリティーの趣旨に共感してノーギャラでゲスト出演。同胞の間でも人気の高い「花(すべての人の心に花を)」をはじめ朝鮮民謡「アリラン」も披露し、喝采を浴びた。
最前列で拍手していた成貞子さん(73、東京・北区在住)は「素晴らしいコンサートだった。とくに青商会の若いアボジたちが頼もしくてよかった」と話す。また李春龍さん(45、新宿区在住)は「こうした公演はよく見にいくが、今までとは違うソフトな内容。ビデオメッセージやウルトラマンの登場など、アイデア溢れる演出も楽しく、子供から大人まで各世代が出演していたのがよかった。やはり青商会は違う、青商会ならではの発想だと関心。パワーを感じる」と語った。
洪英秀実行委員長(東京青商会会長)の話
みんなが主役、手作りで
とにかく今はフォーラム、コンサートの準備に携わった人たち、また見にきてくれたすべての人たちへの感謝の気持ちでいっぱいだ。とくにコンサートはスタッフ、出演者ともにいい舞台を作ることができたという達成感が大きい。
準備に着手したのは昨年8月。同胞障害者のためのチャリティーコンサートをしようと幹事会で決めると、すべての地域青商会が賛同してくれた。各地域の会長、東京の幹事、その他のスタッフら約30人で実行委員会を結成し、内容と方法、準備のスケジュールなどを重ねて討議した。1人1人が趣旨を理解し賛同したうえで始めたことだけに、関係者全員が能動的な立場で参加。若い世代を中心にした同胞たちの手作りの公演にしようとみんなが心を1つにし、同胞社会のニーズに合わせてアイデアを出し合い、創意工夫を凝らし、準備を進めていった。チケットも、各地域単位でチャリティーの趣旨を説明しながら販売した。
準備の過程で、今年東京で開くことになったウリ民族フォーラムの2部として行うことになった。全国にアピールできて、結果的に良かったと思う。
「組織離れ」が進む今、青商会自体の結成趣旨が良いだけでは、うまく人は集まらない。だから何かイベントを開き、そのイベントの趣旨のよさで人を集め、アピールする方法は重要だ。準備過程は組織をより強く、大きくしていく。
東京ではこの間、3つの地域青商会が新たに結成され(現在14)、準備委員会も2地域で発足した。コンサートに向けた地域での活動を通じても、同胞たちに青商会の存在をアピールできたと思う。(談)