時事・解説/南朝鮮5・1平和デモ弾圧
「前政権と変わらぬ本質」/「催涙弾に使う金あれば失業者を1人でも救え」
整理解雇制導入の影響で失業者の激増が深刻な南朝鮮で、全国民主労働組合総連盟(民主労総)所属の労働者らがメーデーの1日に行った、合法的で平和的な街頭デモに対し、警察が催涙弾を乱射して無差別に弾圧する事態が発生した。催涙弾の投入は金大中「政権」発足後初めてで、労組側は「現『政権』の本質は前『政権』とまったく変わりがない」と猛反発している。(根)
一方的に犠牲強いる
今回のデモは、国際通貨基金((IMF)の管理のもと、労働者のみに整理解雇という一方的な犠牲を強いる金大中「政権」の経済政策に反対し、労働者の生存権固守を求めて起こったものだ。
一昨年に経済協力開発機構(OECD)に加盟し、「先進国」を自認していた南朝鮮では、昨年から韓宝、真露、大農など有力企業が連鎖倒産し、7月には財界8位の起亜グループも破たんした。金融・株式市場は麻痺し、対外信用度は急落、12月にはIMFからの緊急融資が決定した。
金大中「大統領」は就任直後から、経済回復のための労使双方の「苦痛の分担」を訴え、労組、企業、政府・政党の代表で作る「労使政委員会」が、整理解雇制導入や財閥改革着手などで合意。整理解雇制を今年2月から実施した。
その後、現代自動車が全従業員の2割、9000人の整理解雇を決め、起亜自動車は法定管理(日本の会社更生法に相当)による第3者売却の可能性が高まるなど、雇用状況は悪化。しかし財閥改革は遅々として進まず、むしろ企業による不当解雇などの「不当労働行為」がまかり通っている。
この現状に労組側は「経済危機を理由に労働者に一方的な犠牲を強いている」(民主労総)と猛反発。金大中自ら唱えた「苦痛の分担」がまったく守られないことに対する労働者の怒り、反発が、大規模なデモという形で爆発した。
集会・デモに3万5000人
ソウルの宗廟公園で行われた「第108周年世界労働節記念行事」には、民主労総所属の労働者と失業者、「韓国大学総学生会連合」(「韓総連」)所属の大学生ら3万5000人が参加し、整理解雇制や勤労者派遣制の即時撤廃、企業の不当労働行為に対する当局の取り締まり、金融危機の責任者処罰、財閥改革などを金大中「政権」に訴えた。
参加者はその後、明洞聖堂までデモ行進したが、警察は126の部隊、約1万7000人の警察官を投入し、棍棒や盾を振り回して行進を妨害。抵抗する参加者に向けて催涙弾を乱射。このため参加者10余人が負傷、17人が連行された。
民主労総はデモ終了後、明洞聖堂で声明文を発表し、法的な手続きを踏まえた平和的な集会とデモを、警察は暴力で強制解散させようとしたと述べ、「(弾圧は)現『政権』の本質が前『政権』とまったく変わりがないことを示したもの」と指摘した。
また6日には李甲用・民主労総委員長が記者会見し、金大中「大統領」が参加を呼びかけていた第2次労使政委員会には参加しない方針を明らかにし、当局が整理解雇制を強行する場合、5月末から6月初旬にかけて全国規模のゼネストを行うと改めて強調した。
「韓総連」弾圧も企図
弾圧では金大中「政権」発足後初めて、催涙弾が投入された。警察はデモ行進が始まるや催涙弾を発射、これに抗議したデモ参加者が警察側に向かって投石した。この事実は当然、南朝鮮の記者らが現地で取材し、各紙で大きく伝えられた。しかし、警察側は「労働者が先に鉄パイプを振り回し、投石したため、やむなく催涙弾を使った」と事実をわい曲したため、労働者の反発を買っている。
警察はメーデーの2日前に「非常警戒態勢」突入を宣言しており、事前に準備された弾圧であった。催涙弾で市民にも被害が及んでおり、無差別弾圧であることは明らかだ。
さらに、検察は「民主労総の平和的な集会が『韓総連』の加勢で『不法・暴力デモ』に変質した」と決め付けているが、「労学連帯」を妨害して「韓総連」を弾圧し、民主労総の動きも封じ込めようという当局の意図もより鮮明になった。
ハンギョレ新聞5日付は社説で「集会での労働者の声には現実的な妥当性がある。『政府』は積極的な雇用・失業対策を講じて労働界の要求を積極的に受け入れ、実質的な協力をすべきだ」と指摘し、デモの正当性を主張。一般市民からも「催涙弾を使う金があったら、失業者を1人でも多く助けるべきではないのか」など、当局の暴挙に憤激する声が上がっている。