続・高麗青磁への誘い10選 申載天D/青磁童子文輪花鉢
口縁に刻みをつけた六花形の浅く開いた鉢。内側面には浮き彫りで、三方に童子を配し、その間を蓮花と荷葉の唐草文様がびっしりと施されている。
蓮の茎や葉を手にとったり、またそれに跨がったりして戯れている童子の姿は軽妙、ひょうきんで、まことに愛らしい。
蓮花は細かい花弁の筋にいたるまで繊細に化彫りまで加えられてある。内底中央にも蓮花が表されてある。このような浮彫文様は陶笵により成型されたものであろう。
深みを帯びた澄んだ緑色の青磁釉がむらなくかかり釉調は極めて美しい。
作品は鉢という平凡な器形ではあるが、精妙な心にくいまでの図案と素晴らしい浮彫技法、深みのある清澄な釉色の肌など、高麗青磁の美しさをしみじみと味わうことが出来る。
この鉢を覗き見る時、子供を愛し、子供の世界に入って共に楽しんだであろう陶工の心情のほどが理解され、私もまた童心に戻って蓮池で子供たちと共に遊びたい気持ちにかられる。
またこの鉢を見る度に幼い頃のことが思い出され、そして高麗への郷愁に近いなつかしさを感じる。
このような感情は世界に誇る天下一品の高麗青磁をつくり上げた先祖たちに対する誇りとその後裔としての熱い血のつながりからくるものであろうか。
蓮といえば、毎年、花の咲く季節には、病院からの帰り道に普通江畔の蓮池に立ち寄り、今はと咲き茂る見事な花とみずみずしい大きな葉に見惚れ、しばし時の経つのを忘れる。(12世紀、口径19センチ)