時事・解説//朝・日関係膠着の原因はどこに
朝・日国交正常化交渉第9回本会談の早期開催で合意した昨年8月の両国外交部副部長級会談(北京)から9ヵ月以上が過ぎたが、本会談はいまだに再開されていない。その原因はどこにあるのか。(聖)
Q 国交交渉はなぜ再開されないのか
A 昨年8月に再開合意を見たが、日本側が前提条件にこだわり反故にしたからだ
朝・日国交正常化のための政府間本会談がいまだに再開されないのは、「日本人拉致疑惑」の解決を前提条件に掲げているためである。
本会談は、日本側が「李恩恵問題」を持ち出したことで、1992年11月の第8回会談以来中断したままだ。昨年8月21〜22日に北京で開かれた朝・日外交部副局長級予備会談では、前提条件なしに、年内にできるだけ早期に国交正常化交渉を再開することで合意。これと関連した具体的な内容については、双方の駐中国大使館を通じた緊密な連携のもとに調整することで一致した。
在朝日本人女性の故郷訪問問題についても話し合われた。
この問題は9月6〜9日の赤十字連絡協議会第1回会議で合意、第1陣(昨年11月8〜14日)に続き、今年1月27日〜2月2日には第2陣の故郷訪問団も実現した。
昨年11月11〜14日には自民・社民・さきがけの連立3与党代表団が訪朝し朝鮮労働党代表団と会見した。
共和国側の報道文(14日)によると、双方は @第9回本会談の早期開催の促進 A国交正常化前の人道問題と協力問題の進展の必要性 Bこれらの問題を扱う両国執権党の相互往来の必要性――で意見一致を見ている。
にもかかわらず、日本側は「(拉致)疑惑問題に解決のメドがないまま(交渉を)始めると、始めたとたんに行き詰まる」(柳井俊二外務省事務次官)などと、「拉致問題」の解決がなければ国交交渉を行わないとの立場を執ようにとっている。橋本首相も4月の衆院本会議で同様の立場を表明している。
だが、日本の人々は朝・日国交正常化の一日も早い実現を望んでいる。
Q 朝・日関係正常化で必要なことは
A 加害者である日本が被害者である朝鮮人民に謝罪、補償し過去を清算することだ
「朝・日関係正常化は、過去に朝鮮人民に強いた不幸と苦痛に対して加害者である日本が、被害者である朝鮮人民に謝罪し、補償したうえで善隣友好関係を樹立することである」
労働新聞5月8日付の「日本の対朝鮮外交姿勢を論じる」と題する論評はこう指摘している。
45年8月15日の朝鮮解放から53年が過ぎようとする現在も、朝・日間において過去の清算は済んでいない。
日本の植民地下で「従軍慰安婦」にされた南朝鮮女性10人が日本国を相手どり総額5億6400万円の損害賠償と公式謝罪を求めていた「関釜裁判」で、山口地裁は4月27日、日本政府に対し3人の元「慰安婦」に慰謝料を支払うよう命じる判決を下した。
これについては共和国外交部スポークスマンも、「一部限界性はあるが比較的公正な法的処置」と評価していた。だが、日本国側はこれを不服とし、広島高裁に控訴した。
過去に背をそむけ、謝罪を回避するだけでなく、過去を肯定する動きすら出てきている。
関係正常化は共和国の一方的な努力だけでは成就しない。
共和国側は朝・日関係を正常化しようとする立場に変わりはないとしながらも、日本側が前提条件を掲げたり、国交正常化交渉を行う気がないのなら、「あえて会談をしようとはしない」(前述の労働新聞論評)と強調している。