在日朝鮮人人権セミナー、「地方自治体の外国人会議」テーマに学習会
在日朝鮮人人権セミナー(床井茂・実行委員長)が5月29日、東京・飯田橋のシニアワーク東京で、「地方自治体の外国人会議」をテーマに学習会を開いた。外国人会議は、外国人住民の意見を市政に反映させようと、川崎市が1996年に設置したのを皮切りに、東京都など他の自治体でも追随する動きが出ている。学習会では、川崎市外国人市民代表者会議で委員を務める車栄鎬・川崎商工会会長、尹日赫・川崎初中校長の両氏による報告を軸に、在日朝鮮人の権利問題を解決して行くうえで、外国人会議が持つ意味などについて話し合った。(賢)
報告で強調されたのは、日本の朝鮮植民地支配のために日本に住むようになり、解放から半世紀以上にわたって権利獲得に努めてきた在日同胞と、ごく最近に自らの意思で日本に渡ってきたいわゆるニューカマーの人々が、利害を一致させることの難しさだ。
16ヵ国26人(1期2年)の委員からなる同会議は、「地域生活」「教育」「まちづくり」の3つの部会に分かれ、外国人が抱える問題を調査・審議し、結果を市長への提言としてまとめている。
これまでの提言では、外国語による広報の充実、留学生の生活支援など、日本に来て間もないニューカマーの人々にとって切実な問題が多く反映された。
双方に共通と思われる問題でも立場の違いは鮮明だ。教育部会に属している尹氏は、「外国人の教育問題を論じても、配偶者が日本人だったり子供を日本の学校に通わせている人たちと、自主的に民族学校を運営している私たちとでは関心事は異なる」と話す。
また入居差別の問題では、永住権を持つ朝鮮人には住居を貸しても、ほかの外国人は拒む家主もいるという。「長い期間をかけて権利を獲得し、生活の基盤を築いてきた在日同胞にはクリアーできても、ほかの外国人にはできない問題がある。彼らの主張は、30年前の私たちの主張に似ている」(車氏)という。
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「在日同胞はこれからも、独自の権利擁護運動を進めて行く必要がある」
これが両氏の結論だ。ニューカマーの委員が3分の2以上を占め、なおかつ彼らにはほかに権利を主張する有効な場がない事情を考えれば、「在日同胞の問題を前面に押し出していくのは難しい」というのが率直な感想のようだ。
ただし以下のような理由から、今後もこうした場には積極的に参加すべきだとも話した。
一つは在日外国人の権利が話し合われている以上、在日同胞の見解を反映させる必要があること、もう一つはニューカマーの人たちが抱える問題も、突き詰めれば在日同胞が主張する基本的人権の問題に行き当たるとの考えからだ。
例えば朝鮮学校などへの制度的差別の是正を日本政府に求めた日本弁護士連合会の勧告は、日本国憲法や国際条約に照らして、在日外国人の子供たちが教育面で享受すべき権利を明らかにしている。在日同胞だけでなく、在日外国人一般に関わる問題だ。
会議では参政権や2重国籍の必要性を説く委員もいるというが、「外国人の基本的人権がしっかり保障されれば、そういったものは必要ない」(尹氏)、「逆にそういったものでは、外国人固有の問題を解決することはできないのではないか」(車氏)。
尹氏は当面、会議で日弁連勧告について話し合っていきたいとしている。