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ガイドライン関連法案/自衛隊参戦の道作り


 昨年、9月に発表された日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)の関連法案である「周辺事態措置法案」、「自衛隊法改正案」「日米物品役務相互提供協定改正案」が4月28日、日本国会に提出された。新ガイドラインでは、米日の軍事協力の範囲をこれまでの「日本有事」から朝鮮半島、台湾に及ぶ「周辺有事」にまで拡大した。つまり、これによって日本は、朝鮮半島はむろん、アジア全域での米国の軍事行動を全的に後押しするばかりか、直接、参戦する道を開いた。関連法案はその体制作りに本格的に着手したことを意味する。(嶺)

 

武器使用も可能

 今回、国会に提出された新ガイドラインに関連する関連法案は、日本に対する何らの武力攻撃がなくても、米国が海外で軍事行動を起こし、それを「周辺事態」だと判断すれば、日本が自動的に米国の軍事行動に直接加担することを法的に整備しようとするものだ。

 とくに、「邦人救出」を理由にした「自衛隊法改正案」は、指揮官の命令があれば自衛隊員の武器使用も可能となっている。

 こうした法改正によって日本は事実上、武装した自衛隊を海外に出すことが可能になる。

 これは日本の憲法9条にも違反する。だから、あくまでも戦闘が目的ではなく、米軍の「後方支援」だとしている。

 しかし、突発的な戦闘が起きた場合、自衛の範囲かどうかを判断することは、戦地では不可能だろう。

 

軍事協力が必要

 新ガイドラインは、朝鮮半島有事を想定して作られた。

 それは昨年7月、中国を訪れた自民党の加藤幹事長が江沢民国家主席らとの会談で、中国を念頭に置いたものではなく、朝鮮半島を想定したものだと述べていることからも明らかだ。

 この発言の背景には、米国が騒ぎたてた、「北朝鮮の核開発疑惑」がある。93年春、共和国が核拡散防止条約(NPT)脱退を宣言したことに対し、米国は海上封鎖を含む軍事攻撃を計画し、日本の協力を求めたが、日本は国内法が整備されていなかったため対応できなかった。

 つまり、朝鮮有事とはこの時の教訓を踏まえたものであり、新ガイドライン策定へと突き進んだのだ。

 またソ連崩壊後、米国は共和国を武力によって瓦解、吸収するための、平壌を7日間で占領するという「作戦計画5027」を立て、その実行を目指してきた。しかし、この計画は、日本の軍事協力なしには不可能だ。自衛隊の出動はむろん、爆撃のための戦闘機は沖縄など在日米軍基地を必要とし、横須賀から出港する第7艦隊の空母の役割が重要となる。

 日本の空港、港湾、道路、鉄道などがすべて使用される。

 現在、急がれている関連法案の制定は、米軍とともに自衛隊が朝鮮半島に出兵するためのものなのだ。

 

狙いは有事

 新ガイドライン関連法案と共に戦争体制作りの「包括的メカニズム」のためのもう一つの柱が有事立法制定である。

 自民党の梶山官房長官(当時)は、96年8月8日、山梨県で行われた日本経営者団体連盟のセミナーで講演し、朝鮮半島で有事が起これば、武器を持った偽装難民が紛れ込み、それによって在日朝鮮人と「韓国」人の2つの組織の間で「内紛状態」が起こり、可能性としてあるのは、市街戦や局地的なゲリラから始まる、と語り、自衛隊が治安と防衛対応策のために出動することを合法化した、有事立法制定の必要性を強調した。

 朝鮮半島有事を想定した有事立法の制定はこれまでにも幾度となく試されてきた。

 1965年の「三矢作戦研究」では、戦時立法を作り、労働組合、朝鮮総聯などを治安弾圧の対象として対処するシナリオが盛り込まれている。

 さらに70年に入ってからはより具体化し、市街戦に備えるとの口実の下に、朝鮮人集団居住地区への「警備地図」の策定や総聯の幹部らの詳細な身元調査、動向把握なども項目として盛り込まれた。

 自衛隊の朝鮮半島への出兵、それを合法化し、反戦勢力を駆逐する基盤整備――それが一連の関連法案作りの目的なのだ。