国連子どもの権利委員会、日本政府に差別解消を勧告
問われる在日朝鮮人の民族教育への対応
国連子どもの権利委員会は5日、「子どもの権利条約」の日本における順守状況を審査した結果、朝鮮人を含むマイノリティの子どもへの差別的な取り扱いについて全面的に調査し、解消するよう日本政府に勧告した。勧告は、朝鮮学校への制度的差別を集中的に論議したうえで出されたもので、在日同胞の民族教育の正当性とそれを差別する日本政府の不当性が世界的に認められた形。民族教育権擁護運動の新たな局面が開かれることになる。
勧告は、日本の条約順守状況に対する委員会としての見解を示した「総括所見」として出された。所見は、勧告に先立つ部分で、朝鮮人の子どもなどへの差別の禁止が子どもに関わる立法、政策および計画に全面的にまとめられていないことや、とくに朝鮮人の子どもに影響を与えている高等教育機関への進出の不平等に対する懸念を表明している(大学受験資格問題を指すもの)。
所見自体に法的拘束力はないものの、国連の一委員会、それも世界から選ばれた子ども問題の専門家集団が「朝鮮人の子ども」と明示した形でこうした見解を表明したことの意義はきわめて大きく、日本政府の今後の対応が問われる。総聯では92年8月以来、人権委員会など国連の場で継続的に朝鮮学校に対する日本政府の制度的・行政的差別の是正を訴えてきたが、今回の審査結果はその主張の正当性を証明したものと言えよう。
在日本朝鮮人教職員同盟(教職同)中央本部の蔡鴻悦委員長は「心から歓迎する」としたうえで、「日本政府はこの勧告を真しに受け止め、朝鮮人学校と外国人学校卒業生に対する国立大学受験資格・補助などに対する差別的な処遇を1日も早く改善すべきである」とのコメントを発表した。
1日も早い是正措置を
子どもの権利委員会は、「子どもの権利条約」の締約国が、条約を順守しているか監視するために国連に設置されたもの。締約国が提出を義務づけられている報告書をもとに年に3回、委員らが審議し、総括所見を採択する。
5月27日〜6月5日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた第18会期では、94年4月に同条約を批准した日本の順守状況が初めて審査された。この間、教職同の蔡委員長ら5人の総聯代表も現地を訪れプレゼンテーション、会議を傍聴するなど積極的に活動した。
5月27〜28日に行われた審議では、日本政府が朝鮮学校を「各種学校」扱いにすることで、大学受験資格や助成などで著しい不利益を被っていることが集中論議された。
96年5月に日本政府が提出した報告書は朝鮮学校に対する差別の実態を隠ぺいし、高等教育について「いかなる差別もなく認められている」などと記述しており、審議で、委員らからこの問題について質された日本政府代表も同様の答弁を繰り返したが、これが完全に否定された形だ。
「子どもの権利条約」第28条(教育への権利)、29条(教育の目的)、30条(少数者・先住民の子どもの権利)の各条項によると、日本国に在住するすべての外国人の子どもは、自己の民族ないし自国の文化による教育を受ける権利を保障されている。したがって、日本政府は日本に在住する外国人の子どもがそれぞれ自国の言葉をもって教育する外国人学校の教育を受ける権利をそれぞれ保障しなければならない義務を負っている(日弁連調査報告書より)。
これまで審査を受けた80余ヵ国の多くが、審査結果を教育制度改革の参考にしている。2月の日弁連勧告に続き、国連の場でも朝鮮学校差別の論理的「正当性」を失った日本政府は、1日も早く是正へ向けた行動を取るべきだ。 (東)
「子どもの権利条約」に詳しく日弁連勧告作成にも携わった平湯真人弁護士の話
とくに在日朝鮮人の高等教育機関へのアクセスでの差別を明示したことに、重みを感じる。民族学校の存在をまったく無視して「差別はない」としてきた日本政府の主張が、「子どもの権利条約」と相容れないものであることがはっきりした。今回の勧告は、決して国連が一方的に出したものではなく、日本政府は詳細な報告書を提出し、討議で指摘された点については全力で弁明している。その結果として出された勧告を、日本政府は重く受け止めるべきだ。