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ここが知りたいQ&A/国連子ども委員会が勧告を出したが


朝鮮学校の差別解消を促す/日本政府の主張を完全否定

  5日、日本政府に対し、朝鮮人の子どもへの差別を解消するよう勧告したという国連子どもの権利委員会とは。

  委員会は、「子どもの権利条約」締約国の条約順守状況を監視するために国連に設置された。締約国の選挙で選ばれた専門家10人が年に3回、締約国が提出を義務づけられている報告書(初回は批准の2年後、次回からは5年ごと)をもとに、締約国の政府代表と「建設的対話」を公開の場で行いながら審査。総括所見を採択し、懸念される点について改善を促す。審査では、各国のNGOの情報も参考にされる。

 5月27日からジュネーブの国連欧州本部で開かれていた第18会期では、94年4月に条約を批准した日本に対する初の審査が行われた。総聯代表も現地を訪れ会議を傍聴、ブリーフィングも行った。

  総括所見で在日同胞の問題に触れた具体的な内容は。

  総括所見(全49項)は序文、評価(3項)、懸念事項(22項)、提案・勧告(22項)などからなっている。懸念事項の中で、朝鮮人を含むマイノリティ(少数者)の子どもとの関わりにおいて、条約第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第12条(子どもの意見の尊重)が、立法政策および計画に反映されていないことがあげられ、とくに「朝鮮人の子どもに影響を与えている高等教育機関への進出の不平等」に対する懸念が強調された。総括所見は、こうした懸念を表明したうえで提案・勧告の部分で、朝鮮人などマイノリティの子どもへの差別的な取り扱いについて全面的に調査、解消するよう勧告した。

  その意味と意義は。

  所見自体に法的拘束力はないが、国連の委員会、それも各国から選ばれた専門家集団が「朝鮮人の子ども」と明示した形でこうした見解を表明した意義はきわめて大きい。

 5月27〜28日に行われた審査では、日本政府が朝鮮学校を「各種学校」扱いにすることで、子どもたちが著しい不利益を被っていることが集中論議された。所見に「朝鮮学校」という言葉こそないものの、解消を勧告した「差別」に、朝鮮学校への制度的差別が含まれているのは明らかだ。とくに、「朝鮮人の子どもに影響を与えている高等教育機関への進出の不平等」への懸念が朝鮮学校生に国立大学受験資格がないことを指しているのは明白で、「子どもの権利条約」に詳しい日本弁護士連合会の平湯真人弁護士も「重みを感じる」と話している。

  日本政府の見解は。

  96年5月に日本政府が提出した報告書は、朝鮮学校に対する差別の実態にまったく触れていなかった。審査の際、朝鮮学校生に大学受験資格を与えていないことや、重い経済的負担を強いていることなどを各国の委員たちに問い質された文部省の代表は、「差別はない」「(外国人学校は)基準が違うから」などと従来の主張を繰り返した。

 委員会は、こうした議論を踏まえたうえで差別解消を勧告した。つまり、日本政府の主張を完全に否定したということだ。在日同胞の民族教育の正当性と、それを差別する日本政府の不当性が世界に認められたと言えよう。