視点
金大中氏は「大統領」として米国を訪れることがよほどうれしかったのだろう。まるで「故郷に錦を飾った」かのような親米ぶりが目立ちすぎた感がある。
10日の上下両院議員を前にした演説では、1973年の拉致事件、80年の光州事件にからむ死刑判決から米国が救ってくれたと感謝しつつ、「朝鮮戦争でも3万3000人の米国の若者が犠牲になるなど、強い連帯感で結ばれている」などと、リップサービスというにはいささか度が過ぎる発言を繰り返した。
とくに見過ごせなかったのは、「韓国を含む東アジアの米軍が引き続いて駐留することが地域の平和と安定にとって必要で、米国の国益とも一致する」と語った点だ。
朝鮮分断の原因が米軍による南朝鮮占領にあることは衆知の事実だ。53年間の分断によってもたらされた悲劇もはかり知れない。
分断に終止符を打ち、朝鮮半島ひいては東アジアに平和と安定をもたらすためには、米軍の駐留ではなく撤退が不可欠なのである。
にもかかわらず、彼は外勢である米国に媚びを売り、同族に対しては「米国との強い安保同盟に基づいて北朝鮮に接」する(9日のクリントン米大統領との共同会見)と対決姿勢を露にしている。
そこには民族和解の姿勢は見られない。外勢にべったりでは、統一と団結、民族の利益をともに追求していくことはできない。(聖)