伊丹、豊明の両市議会が朝鮮学校への処遇改善を求め日本政府に意見書
兵庫県伊丹市議会と愛知県豊明市議会は、日本政府が日本弁護士連合会(日弁連)の勧告を受け入れ、朝鮮学校への処遇改善を実施するよう求める意見書を内閣総理大臣および文部大臣に提出した。伊丹市議会では6月24日、豊明市議会では25日に採択された。日弁連は今年2月、朝鮮学校に対する制度的差別は重大な人権侵害にあたるとして、速やかに是正すべきことを日本政府に勧告した。その受け入れを求める意見書が地方議会で採択されたのは今回が初めて。法曹界の一角が示した差別是正の必要性を、地域社会の世論が改めて裏付けたものと言える。両市以外でも、同胞らはこうした意見書採択を各地方議会に働きかける運動を進めている。
日本政府に日弁連勧告受け入れを促す
意見書はそれぞれ、日弁連勧告に言及しつつ、「過去において強制的に移住させられた歴史を持つ在日韓国・朝鮮人らにとって、朝鮮人学校に対する差別的扱いは、屈辱的な精神的苦痛であり、人間の尊厳に対する侵害であるとともに憲法や、自民族の文化による教育を保障した子どもの権利条約、国際人権条約などに違反する」(伊丹市議会)などと指摘。受験資格認可の早期実現と、助成充実を「強く要望する」としている。
意見書の提出を進めた豊明市議会の鈴木勝善議員は、「この間、学校関係者の招請を受けて朝鮮学校を訪問し、在日朝鮮人の人々にとって民族教育がいかに大事かを身をもって感じた。朝鮮学校の処遇改善が日朝国交正常化の第一歩にもなり得ると考え、それを全国にも発信したかった。こうした動きが重なれば、日本政府による制度的差別をなくす道が開かれるのではないか」と話している。
豊明市に所在する愛知朝鮮中高級学校教育会ではこの2年間、同市の議員や行政関係者、市民に対し、民族教育の正当性をアピールしてきた。1996年には教職員らが都築龍治市長と懇談。昨年4月からは、市が「私立高等学校等授業料補助金」を同校に適用している。同年9月には市長が同校を初めて訪問した。
また11月には日本市民を対象に、初の公開授業と「朝・日ふれあいバザー」を開催。市議、市教育長を含む400人を集めた。
また県下の同胞、総聯組織などによる県民族教育対策委員会は昨年、朝高卒業生の国立大学受験資格と私学並助成を求める22万余人の署名を集め、11月に文部省に提出。12月には名古屋大学学長に会い、処遇改善を求めた。
一方、総聯兵庫・伊丹支部と伊丹朝鮮初中級学校では、市長、市議らに会って日弁連勧告について説明。議会で取り上げることを求めてきた。
同市では95年の阪神・淡路大震災以降、日本市民らが「朝鮮学校の復興を支援する会」をつくり、朝鮮学校父母への補助を求めて1万人の署名を集めるなどしてきた。昨年4月には市が、保護者補助金を生徒1人当たり年額2万円から7万円に引き上げた。