和解、平和、統一/朝鮮半島情勢を読む(1)鄭周永訪北
初の板門店往復、金剛山開発へ/民間交流の模範に
南朝鮮・現代グループの鄭周永名誉会長一行の訪北、板門店での朝鮮人民軍と国際連合軍間による将官級会談の実現、「民族の和解と団結、統一のための大祭典」(8月14、15日)の板門店開催提案など、和解、平和、統一へと進みつつある朝鮮半島情勢について見た。(基)
牛500頭を連れて
6月23日午前、8日間の訪北を終えた南朝鮮・現代グループの鄭周永名誉会長一行が、板門店を経由して南に帰還した。民間人としては初めて板門店を往復したことになる。
鄭名誉会長一行は訪北に際し、牛500頭(赤十字を通じた支援)を連れていった。さらに501頭を共和国に送る予定だが、端数の1頭には「今後も支援を続ける意味」(鄭名誉会長)が込められているという。
訪北を終え板門店の南側地域で記者会見した鄭名誉会長は滞在中、金剛山開発に関する議定書を交換するとともに、遊覧船観光事業の契約書を締結したことを明らかにした。また、第三国の建設市場への共同進出、北側での鉄筋、自動車組立生産工場の建設、西海岸での工業団地開発および通信、中古船舶解体事業などに関する合意書を採択した(朝鮮日報6月23日付)という。南朝鮮当局はこれらの合意を後押ししていく方針とされる。
さらに、今回の鄭名誉会長一行訪北を機に、これまで北側からの招待状と身辺保証証明書の発給を受けたうえで南当局自身が行っていた訪北の承認を、現代グループもしくは南当局指定の観光機関、すなわち民間に移管し一括処理させる方案が浮上している。そうなれば南当局の厳しい規制のもとで進められてきた民間交流の枠が大幅に緩和されることになる。
今回の合意履行がスムーズに進めば、今後の「民間クラス交流の模範」となろう。
世界的レジャー地に
合意事項の最大の目玉は金剛山開発だ。太白山脈の北部、軍事境界線から北側にわずか800メートル入った所に位置する金剛山(1639メートル)は、朝鮮民族の聖山である白頭山などと並んで朝鮮5大名山の一つに数えられ、古くから「民族の宝」として愛されてきた。
今回、合意した金剛山開発計画の詳細は公表されていないが、関係者によると「高城郡温井里をはじめ内金剛と外金剛一帯に世界的な総合レジャースポーツタウンを建設し、南北の住民はもとより外国観光客を引き入れ」(リ・ビョンギュ金剛開発副社長)、南北間に遊覧船を運行して「1日1000人の観光客を誘致する」(鄭名誉会長)という。そして「7月末までには北との合弁会社を設立する予定で、9月25日の遊覧船運行に向け準備を急いでいる」(鄭夢憲会長)。
一帯は軍事境界線に近く数多くの軍事施設がある。遊覧船の航路はその境界線を越える形で築かれるだけに、プロジェクトが実現すれば単なる観光にとどまるだけでなく、南北の緊張を緩和するという相乗効果をもたらすことになる。
板門店を往来しての鄭名誉会長一行の訪北、そして一連の合意は、一民間企業トップの訪問という次元を超えて、南北の自由往来、和解と団結のための礎を作ることにもつながる意義深いものだったと言えよう。