留学同大阪ディベート「民族結婚VS国際結婚」から見えたこと
「民族結婚VS国際結婚」で同胞青年らが激論――そんなディベートが5日、大阪市内であった。同化・「帰化」の流れとも関連し、在日同胞社会で関心の高い「結婚問題」を、一般論でなく「自分ならどうするか」との視点から考えてみようと留学同大阪が企画し、日本の大学に通う同胞学生ら40余人が参加した。本来の自分自身の主張に関わりなく2つの派に分かれたパネラーがそれぞれの役回りを演じた言わば「模擬戦」だが、よりよい出会いを求める「理想」と、それを妨げる諸々の「現実」について意見をたたかわせる中で、同胞青年が置かれた微妙な現状が浮き彫りになった。(賢)
同胞の輪広げる環境づくり急務
ディベートには、「民族結婚こだわり派」と「(主に日本人との)国際結婚容認派」から各4人、司会1人の計9人が出演。まずはそれぞれの代表が主張の骨子を述べ合った。
「容認派」として出演した全賢基さん(阪大2回生)は、「世界では情報化などにより、民族を超えて個々の関係が密になっている。相手の背景より個性を重視すべき」と主張。同じく「こだわり派」の文彰浩さん(奈良大3回生)は「境遇、価値観などの理解と一致こそが大事。若い日本人にも差別意識は残っており、国際結婚は周囲の反対などによって破局に至りやすい」と応じた。
そして、ひとしきり意見の応酬が続く。
…………
こだわり派「在日朝鮮人のことを理解している日本人がどれだけいるか」、
容認派「民族間の問題も、個々の関係で変えられるはず」
こだわり派「子供が日本人として育っても耐えられるか」、
容認派「理解のある日本人もいるはず」
こだわり派「周囲の反対にどう対処するか」、
容認派「親や民族にしばられて、相手の人間性を見誤る可能性の方が問題」
容認派「同胞数が最も多い大阪でも出会いの場は限られる。他の地方では『民族』にこだわる余地はもっと少ない。そういう現実を直視しているか」、
こだわり派「積極的に行動すれば出会いのチャンスはある」、容認派「そういう場も情報も絶対的に少ない」
「同胞が広く分散し、または日本社会に埋もれている現状のもとで、民族にこだわり切れるのか」「民族抜きで相手を選ぶことが幸福を妨げる結果につながらないか」
この日の論点をまとめると、以上の2つになる。
会場にディベートを聞きにきた張純子さん(摂南大2回生)は、「2世など上の世代の人と話しているときは、自分が民族を守らなければと強く思う。でもこうして同年代どうしで自分自身が置かれた状況を考えてみると、揺れる部分もある。とにかく色々な角度から、自分はどう生きるべきか考えていきたい」と語った。
民族にこだわりたいという理想を持っていても、同胞社会を取り巻く状況は厳しい。かと言って、安易に妥協すれば同化に陥ってしまう。目下のところ、同胞社会を受け継ぐべき世代にとって、選択肢の幅は広くないのが現実だ。
閉塞状況に陥らないためには、まず、同胞青年ら本人が積極的に行動することだろう。そして何より、同胞のつながりの輪を広げていくことで、周囲から環境を整えることが急務だと言える。