南朝鮮「国籍法」改定と在日同胞への影響―任京河A
改定の背景/世界のすう勢と内外の批判
1948年12月20日に制定された南朝鮮「国籍法」は今回の改定まで50年間、父系血統主義の基本原則に固執してきた。
これは、世界的に例のない後進立法だと言える。
自国の公民に生まれた子に、その国籍をそのまま継がせる制度を血統主義と言う。
そのうち、父が自国の公民の場合にだけ国籍を付与することを父系血統主義と言い、父が自国の公民でなくとも母が公民であれば国籍を付与することを父母両系血統主義と言う。
どちらを選択するかは国の政策上の問題であるが、個人の国籍選択の自由・権利の見地から見ると、父母両系血統主義が合理的で妥当なのは言うまでもない。
世界的にも70年代以降、父母両系血統主義への急速な移行が進んだ。63年10月9日に公布、施行された共和国国籍法は、その当時から男女平等思想に基づき父母両系血統主義を採用している。
南朝鮮では近年になって、父系血統主義が封建的家父長制の遺産であり、男女差別だとする批判的世論が広まった。
憲法の男女平等原則に反するとの主張も現れ、昨年6月から憲法裁判所で争われている。
同時に、南朝鮮「政府」自体が女性差別撤廃条約、国際人権規約の批准を機に、男女平等の父母両系血統主義が国際的常識となっている世界のすう勢に逆行できなくなったという背景がある。
もう一つの背景としては、父系血統主義に対する在日同胞の批判の声が高かったこともある。
父系血統主義によって、日本人男性と結婚した在日同胞女性が産んだ子がすべて日本国籍になってしまうという批判は、民団内部からも起きていた。
しかし、彼らの意見を南朝鮮「政府」はこれまで黙殺してきた。
こうした態度は、民団系の同胞たちから「棄民政策」と非難されていた。
「改定法」が父母両系主義に移行することで、こうした問題が解消されるとの「評価」がある一方で、2重国籍者に国籍選択を義務化することで、従来の「棄民政策」を是正したのではなく踏襲しているとして、すでに問題点を指摘する声があるのは注目すべき事実である。
しかし、こうした「評価」がどうであれ、在日同胞が朝鮮人として自己の国籍を守り生きていこうとする場合、「改定法」に問題があるのは明白である。(イム・ギョンハ=朝鮮大学校専任講師・民法、国際私法)