キーワードで見る朝米関係の現状
政治・経済の正常化のプロセスを明記した基本合意文(94年10月調印)に沿って朝米は、信頼を積み重ねながら国交正常化へと向かっている。共和国は黒鉛減速炉の凍結、米国への一切の経済障壁撤廃など合意事項を誠実に履行している。しかし米国の主導下で進められている軽水炉建設は現在不振状態にあり、さらには年間50万トンと約束された米国による重油の納入も停滞しており、経済制裁緩和の全面実施も3年にわったて行われていない。これらに対して18日発朝鮮中央通信は、米国に合意文の履行を強く促した。その一方で朝米間の軍事チャンネルは、4者会談に加え板門店での将官級会談が開かれるなど増えている。朝米関係の現状を見た。
軽水炉提供
2003年完成が公約/遅延は基本合意違反
ワシントン8日発共同通信によると、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)関係筋などは8日、朝米基本合意文に基づき米国が共和国に提供する軽水炉2基の完成が、公約の2003年から大幅に遅れ、2007年以降になることを明らかにした。
基本合意文に基づき、共和国が黒鉛減速炉と諸関連施設を凍結する代償として、米国は2003
年までに100万キロワットの軽水炉2基を提供すると約束した。
共和国は合意文調印後、1ヵ月以内に義務づけられていた黒鉛減速炉の完全凍結を実施し、96年3月からは核燃料棒の保管を開始した。
一方、軽水炉提供は、軽水炉の型の決定に手間取ったことと、96年9月の潜水艦事件の影響(南が「身辺の安全」を理由に技術者の派遣を拒否したこと)で、1年以上建設が遅れた。
そして昨年8月、今年8月を目途に咸鏡北道琴湖地区で軽水炉建設のための基礎工事に着手したものの、米国はKEDO内の事情を理由に、米、日、南などによる今後の費用(約46億ドル)分担さえ決めていない。
軽水炉建設の遅延は、明らかに合意違反である。18日発朝鮮中央通信は、その結果についての全責任は「米国側が負うことになろう」と警告している。
重油納入
年間50万トンが米の義務/資金未調達で停滞 日・南に分担増求める
重油問題は、朝米基本合意文に基づき黒鉛減速炉などの凍結にエネルギー損失を補償するための措置として、米国が責任をもって年間50万トンを共和国に納入するものだ。
費用は軽水炉同様、KEDOがまかなうことになっている。96年度分(同年11月〜97年10月)の50万トンの重油納入は、大幅に遅れたが今年3月に終わった。しかし97年度分については資金調達の見通し(約6000万ドル)がつかず、満足に納入できていない。
米政府は、議会の正式承認を必要としない特別予算枠から今年度の支出、約3500万ドルを追加することを決めた。
一方では、オルブライド米国務長官が4月末の日本と南朝鮮訪問を通じて、双方に2000万ドルの費用分担を迫った。
共和国は6月、米政府に書簡を送り、重油納入の遅れを強く非難した。
重油の納入問題も、朝米基本合意文の重要な柱の一つである。
制裁緩和
全面解除が進展のかぎ/米経済戦略研も政府に促す
米国は1950年の朝鮮戦争以降、対敵性国交貿易法と同施行令である海外資産統制規定および輸出管理法などに基づき、共和国に対する一切の経済交流を禁止した。
朝米基本合意文では、調印後3カ月以内に、通信サービスと金融決済に対する制限措置の撤廃を含めた貿易と投資の障壁を緩和することになっている。
それに基づき共和国は95年1月、米国に対する一切の経済障壁を撤廃した。
続いて米国も同月、通信に関する業務取り扱いの許可など4項目の規制措置を緩和し96年4月には人道的物資援助の制限を解除したが、規制の全面解除には未だに踏み切っていない。そして米国は自己の義務であるこの問題を対北交渉・圧力のカードに利用しようとしている。
こうした中で、米政府や議会に影響力の強い米経済戦略研究所が6月17日、政策報告書を発表し、朝米基本合意文に基づき朝鮮戦争以来続く共和国に対する経済制裁の解除を推し進め、貿易と投資を促進させることを米政府に強く促したことは注目される。
経済制裁の全面解除は、今後の朝米関係を進展させるカギとなろう。
ミサイル問題
自主権、生存権の問題/「禁輸」には見返り保障を
共和国のミサイル問題をめぐる朝米協議はこれまで96年4月にベルリンで、97年6月にニューヨークでそれぞれ行われたが、具体的な成果はなかった。同年8月27日にもニューヨークで3回目の協議が行われる予定だったが、張承吉・駐エジプト大使の米国亡命と関連し、延期。今年3月13日のベルリン会談で朝米は、ミサイル協議の再開で合意した。
ミサイル開発について言えば、これは朝鮮人民の「自主権、生存権に関する問題」(6月16日発朝鮮中央通信)である。何よりも共和国は今、核兵器や大陸間弾道ミサイルをはじめ大量殺りく兵器を最も多く所有している米国と軍事的に対峙しているからだ。
同朝鮮中央通信は、ミサイルの開発中止問題について、これは朝米間に平和協定が締結され、共和国に対する米国の軍事的脅威が完全に除去された後にこそ上程、討議される問題であると強調し、米国がまず平和協定締結に応じるよう求めている。さらに米国が真にミサイル輸出を阻止したければ、1日も早く経済制裁を解除し、経済的補償を行うべきだと主張した。
結局、この問題も米国の出方しだいである。ミサイル協議の進展は経済制裁解除を促す要素にもなろう。
将官級会談
停戦協定検討し今後の対策を/北は朝米平和協定求める
板門店での朝鮮人民軍と国際連合軍間の実務協議(秘書長クラス)で会談開催を合意し、これまで3回(6月23日、30日、7月16日)行われた。人民軍の李賛馥中将と、米空軍のヘイドン少将がそれぞれの代表団を引率した。
現在、朝鮮停戦協定(1953年7月)は米国の相次ぐ違反によって形がい化しており、停戦委員会も91年3月、米国が何の資格もない南朝鮮軍将官を同委国連軍側の首席委員に任命して以来、有名無実化している。このような状況下で一連の将官級会談は、朝鮮半島の強固な平和と安全を保障するための対策を討議するために開かれた。
第1回会談で人民軍側は、そのためには朝米間で平和協定が締結され、南朝鮮から米軍が撤収しなければならず、それまで双方間で武力衝突と突発事件などを防止し、解決するための新たな装置を作らなければならないという立場を明らかにした。
そして双方は、朝鮮半島の現実発展の要求に沿って停戦協定を真摯に客観的に検討し、それに伴う対策を講じるための会談を継続することにした(6月25日発朝鮮中央通信)。
一方、7月3日、6月22日に遭難した共和国の潜水艇乗員の遺体が返還されたが、それは第2回会談で、国際連合軍側が共和国の要求通り遺体の早期返還で合意を見たからだ。
4者会談
米軍撤収問題を議題に/第3回本会談開催へ 関係改善のきっかけに
「(朝鮮半島の)恒久的平和協定を実現する過程を始める」として米国・南朝鮮が96年4月に共和国、中国に提案し、3回の予備会談などを経てジュネーブで2回(昨年12月、3月)開催された。
共和国は、朝鮮半島の平和保障という会談目的に沿って南朝鮮駐屯米軍撤退と朝米平和協定問題を話し合うことを主張。しかし米国が第2回会談で共和国の提案を拒否したため、こう着状態に陥った。
一方、朝米は、3回にわたる予備会談を前後して開いた会談と2回の本会談の枠内での協議を通じて、双方の関係を前進させた。第3回予備会談(昨年11月)終了後には、金桂寛外交部副部長がカートマン国務次官補代理(当時、現在朝鮮半島和平協議担当大使に指名)と米国務省で会談し、連絡事務所設置など懸案問題を討議した。また第1回本会談後の昨年12月、米財務省外国資産管理局は共和国の在米資産内容の調査に着手。さらに米国は今年2月、共和国に食糧20万トンを支援することを発表した。
こうした流れの中でカートマン氏は、8月中に金副部長と会談を行い、第3回本会談とミサイル協議の再開などを求めることを20日に明らかにした。