「日本の戦時下での強制連行に関する東京シンポジウム」
日本の戦争犯罪を追求した「日本の戦時下での強制連行に関する東京シンポジウム」(主催、同実行委員会=鈴木二郎代表)が7月31日、東京・早稲田大学の国際会議場で行われ、元「慰安婦」、強制連行被害者と、南北朝鮮、日本の専門家、研究者と市民ら480余人が参加した。「強制連行と真相究明」について、また南北それぞれの元「従軍慰安婦」と強制連行被害者の証言を聞いた後、日本が今後何をすべきかなどに対する報告が行われた。また、同日、被害者による記者会見も行われ、日本政府がいまだに進めている国民基金について不快感を表わし、1日も早い日本と朝鮮の関係改善のためにも真相を明らかにし、心からの謝罪と補償をしてほしいと訴えた。
「今も消えぬ過去の記憶」/北と南の被害者が訴える
第1部の「強制連行と真相究明」ではパネラーとして空野佳弘弁護士、吉見義明・中央大教授、水野直樹・京都大助教授、鄭鎮星・ソウル大助教授、梁達柱・「従軍慰安婦」および太平洋戦争被害者補償対策委員会委員長が参加した。
梁委員長は、20世紀が終わろうとしているにもかかわらず、日本政府は今日まで過去を清算しようとする姿勢を示していないとしながら、日本が犯した強制連行は国際法的にも集団拉致に値する犯罪だと厳しく批判した。
空野弁護士は強制連行の概念について、肉体的なものに加え、だましたり、自由を奪うなどの精神的なものも含まれると説明し、「従軍慰安婦」は強制連行に値する、というのは国際的に認められていると指摘した。
また吉見教授は、「従軍慰安婦」問題で重要なのは、慰安所制度そのものであり、未成年者を使役したり、自由を奪うなどその構造自体に問題があったと指摘し、今後研究者として、資料公開を日本政府に迫るとともに国家責任を追求していくことが大事だと強調した。
第2部「被害者の証言」では、「慰安婦」にされた共和国の李京生さん(81)と南朝鮮の金允心さん(69)、また共和国の強制連行被害者である金世国さん(72)が、それぞれ証言。李さんは、12歳の時に連行され慰安婦にさせられた、その記憶はいまも消えることはない、補償は誠意を持ってきちんとやってほしいと訴えた。金さんは、外でゴム飛びをしている時に連れていかれ「慰安婦」にされたが、あまりにもつらくて逃亡し、1回目はつかまって拷問され、2回目に成功したが、いつも過去におびえていたと、肉体的苦痛に加え、精神的苦痛を訴えた。
金さんは、14歳の時に新義州の東洋綿花会社に労働者として強制連行され、その後和歌山県の内海紡績工場に連れていかれ、1日に15時間の厳しい労働を強いられ、手を休めると暴行を受けた、と証言した。
第3部「21世紀に向けた日本の課題と展望」では、ジャーナリストの黒田清さん、中原道子・早稲田大教授、土屋公献弁護士が報告した。
土屋弁護士は、強制連行、「慰安婦」問題でまずやるべきは、真相究明である、日本が戦争で何をしたのか、政府の持っている資料を全部公開させることが再発防止にもなり先決だと指摘。そのためにも議員による調査会立法の必要性について強調した。
最後に同シンポ実行委員メンバーの床井茂弁護士が、世界人権宣言50周年にあたる今年、南北朝鮮から研究者の報告と、被害者の証言を聞くことができたことは意義があると指摘した。そして、日本は戦争でアジアの国から人、物を奪ったがいまだそれを清算しておらず、共和国に関しては一切の補償が行われていないと述べ、日本の中で歴史に逆行するような動きがあるが、それを許さない世論をつくるために、真実を一つ一つ解明していくことが大事だと強調した。