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視点


 ジャーナリストの今津弘氏の近著「ジャーナリスト その優しさと勁さ」(スリーエーネットワーク)を読んだ。長年の新聞記者生活を通じて、直接、間接的に出会った人々とのエピソードや氏自身の考えが綴られている。今津氏は朝日新聞社で政治部次長、論説副主幹などを歴任、現在は同社社友。一貫して朝鮮問題に関わってきた。

 著作は故三木武夫元首相夫人、睦子氏についても触れている。睦子氏は日本人として最後に金日成主席と会見した。その直前、主席とカーター元米大統領が会談し、「核問題」で生じた一触即発の危機が対話解決へと転換した。直後に三木さん家族と会った主席は、カーター氏が1回目の会談直後にクリントン米大統領に連絡をとっていたことなどの裏話を話した。

 そんな事に言及しながら今津氏はこう書く。

 「…(主席は)この 好ましい日本人 を相手にすることで、30年以上も途絶えている日朝関係に風穴が一つあくかも知れないとも思ったろう。しかも、この人は元首相三木武夫を50年支えた政治家の伴侶で、その衣鉢を自分流で継ごうとしている。それやこれやを考えて主席は、米朝会談成功の第1報を自分の言葉で三木睦子さんに伝達したと思う」

 朝・日国交正常化の早期実現をも願っていた主席の言葉を遺言と受け止める睦子氏。にもかかわらず、朝・日関係は進まない。小渕新政権誕生が関係改善への転機になれば良いが。(聖)