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留学同サマーフェスティバル「マダン98」


 日本の大学などで学ぶ在日同胞学生が集う夏の恒例行事、サマーフェスティバル「マダン98」が、3〜6日に長野県の車山高原で行われた。在日本朝鮮留学生同盟の学生らが企画・運営しているもの。今年は学生と関係者ら約270人が参加した。内容は、日本社会での民族差別と祖国統一を巡る情勢をテーマにした講演・討論と、民族の伝統芸術の発表会をはじめとする交流イベント。学生らの表情を追いながら、この世代が持つ「民族」のイメージなどを探った。(賢)

 

「民族」にプラスイメージ/差別の本質 理解が課題

 「マダン98」では、テーマは同じ「民族」でも、自らを取り巻く社会・時事的な問題を論議する場より、芸術発表会など朝鮮人としての自己をアピールする場の方が熱気があった。

 初参加した南山大学1年生、金哲基さんにとっても、クライマックスは自らが出演したサムルノリだった。練習の成果が実り好評を得た嬉しさもあったが、「普段から、日本人の友だちに出自を説明する時など、朝鮮人としての自分をアピールする際に最も民族を意識する」という。

 金さんは日高卒業だが、民族差別を実感したことはなく、民族をマイナスに感じたこともない。逆に、「朝鮮人だということで関心を持たれることは自分にとってプラス」だと言い切る。

 10人前後に分かれての班別討論でも、同様の発言が聞かれた。差別を直接感じる状況が減る中で、朝鮮人であることを自らの個性としてとらえる「プラス志向」が、徐々に広がっているようだ。

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 ただしこうした傾向は、この世代が抱える課題と表裏を成すものでもある。日常的に差別を感じないからと言って安易な雰囲気に支配されれば、本質的に変わっていない民族差別、自主性の侵害とたたかう力が去勢されることにもなりかねないからだ。

 今回も、「朝鮮人と言うだけでイジメられ続け、死のうと思ったこともある」などと告白する学生もおり、いまも厳しい現実があることを改めて考えさせられた。

 実行副委員長のリ・ミンスさん(兵庫栄養専門学校2年)は、「日々の生活で辛さを感じないという人がいるのは、置かれた状況の違いによる。個々の努力で差別の壁を乗り越えることも大事だが、差別の本質をしっかり認識してその壁を崩すべき」だと指摘する。

 ただ、普段はこうした現実を実感することの少ない学生らも、機会があれば相応の反応を見せる。

 例えば「差別」をテーマにした演劇には、「悔しさが込み上げた」との反響があった。「祖国統一」に関する学習発表会では、分断が在日同胞に「負の意識」を強いている現実などがテーマに含められたが、こうした話題は班別討論でも持ち出された。神戸大学3回生の「正樹さんは、「普段は距離を感じがちな統一の問題などを話し合えたことは、印象に残った」と語る。

 実行委員長を務めた名古屋市立大学の4年生、鄭充善さんは力説する。

 「歴史や文化、社会問題まで、朝鮮人として知るべきことを知ってこそプラス志向や個性も磨きがかかる。意見を交換し、個性を発揮して刺激し合う場として、留学同やマダンは重要性を増してくると思う」