本社記者ルポ//黄海北道沙里院市の正方協同農場を訪ねて
【平壌発=本社記者柳成根】共和国では今、建国50周年を豊作で迎えようと、農業に全力が注がれている。6月末までに田植えを終えた各地の農村では作物が順調に育っており、稲刈りの時期に照準を合わせて着々と準備が進んでいる。このほど黄海北道沙里院市正方里の正方協同農場を訪ねた。
効果発揮する複合微生物肥料/電力問題も自力解決へ
正方協同農場は、1954年に小単位の農場が各地にできた後、58年に統合されて協同農場となった。正方里という1つの里がそのまま、1つの農場だ。これまで、金日成主席が18回、金正日総書記が3回、現地指導に訪れた。
耕地面積は全国平均よりも広い920町歩、1900人の農場員が稲作など担当別に13の作業班に別れ、田植えの忙しい時期には早朝から夕方遅くまで目一杯働く。
今年の農業の進み具合について聞くと、林春成・管理委員長(53)と金光正(61)里党責任書記は開口一番、「うまくいってます」と口を揃えた。田植えの時期を従来よりも6日早め、6月4日までにすべて終えたことで、営農が順調に軌道に乗ったという。
同農場では、コメやトウモロコシのほか、キュウリやナス、トマト、白菜などの野菜、リンゴや梨、桃などの果物も栽培している。蚕業や畜産にも力を入れており、各作業班や世帯ごとに子豚やヤギ、鶏、アヒルなどを育てている。
今年のコメの収穫は、1町歩当たり、昨年に比べて27%の増収が見込まれているという。また化学肥料の絶対量が不足する中、肥料問題を自力で解決する努力もしている。
同農場には、埼玉県の在日同胞の祖国愛によって昨年2月に建てられた沙里院愛国複合微生物肥料工場がある。工場の広さは462平方メートルで、50キロリットルのタンクを1000個、200キロリットルのタンクを170個備える。1回の作業で100トン、年間1000トンもの複合微生物肥料を生産し、正方里だけでなく沙里院市全体に供給している。
複合微生物肥料とは、地力向上に有効な有機物を土の中で発酵・分解させて作られる肥料のこと。農産物増産に大きな効果を発揮するだけでなく雑草や害虫の発生も抑え、家畜の下痢や異臭を防ぐ効果もある。
同農場ではこれまで5回、農地に散布し大きな成果を上げている。複合微生物肥料を使うことで化学肥料も大幅に節約できる。
このほか、同農場では落差式水力発電所を2ヵ所、小型風力発電所を1ヵ所つくり、電力問題の解決にも力を入れている。
林管理委員長は、「共和国は今、困難な時期にあるが、農場員はみなこれを乗り越える自信と将来への楽観にあふれている。秋の収穫時にまた来て下さい」と語っていた。