「民族の心伝えたい」/夏期学校に参加した朝大生、朝高生
恒例の夏期学校が今年も全国各地で行われた。夏期学校とは、夏休み中の朝高生、朝大生が、日本の学校に通う同胞児童を対象に総聯支部の事務所で、朝鮮の言葉や文字、歴史、文化などを教えるもの。祖国と民族に触れる貴重な体験だ。一方、朝大生や朝高生にとっても同胞社会の生の現実に触れる社会勉強の場となっている。夏期学校に励んだ学生らはどんな思いを抱いたのか。彼らの姿を紹介する。(琴)
同胞社会の現実も体験
7月28日、朝青西東京・東部支部の講堂に集まったのは、朝高生3人と朝大生1人の計4人。約2週間の間、同胞児童に朝鮮語などを教えるかたわら支部の清掃などのボランティア活動も行う。
学生らは初日からさっそく同胞宅を訪ねて回り、夏期学校の参加を呼びかけた。
教材作りでは、楽しく朝鮮語が学べるようにイラストを交えるなど色々工夫を凝らした。
7月31日の開講式には8人の同胞児童らが集まった。ほとんどが初めての参加者だ。
児童らは初めて習う朝鮮語に悪戦苦闘していたが、2日、3日と勉強を重ねるうち、自分の名前もスラスラと書けるようになった。半分以上が学齢前であるにも関わらず授業中の集中力は高い。勉強も楽しそうだ。
最後の授業では朝高生らから児童に手作りの卒業証書が手渡され、生徒らが夏期学校の感想を発表し合った。
「ウリマルで名前が書けるようになった」(金麻里ちゃん、小1)、「一番嬉しかったことは、ウリマルの歌を教わったこと」(金里奈ちゃん、5歳)、「発音が楽しかった。早くウリハッキョに行きたい」(趙顕真君、6歳)
子供たちの感想に目を細めながら聞き入っていた李由夏さん(高2)は、「ウリマルをまったく知らない子供たちにうまく教えられるかどうか最初は不安でいっぱいだった。だけど子供たちは未熟な『先生』の授業に熱心に聞き入り、心を開いて接してくれた。ウリマルであいさつする姿はとても嬉しかった。私も子供から多くのことを学んだ」と話す。
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こうした思いは、夏期学校に参加した全国各地の朝大生、朝高生に共通したものだ。
学生らにとっても夏期学校は、同胞社会の一面を知る貴重な機会となったようだ。
受講生を募るため同胞宅を訪ねて回った学生を冷たくあしらう同胞は少なくなかった。居留守を使われたり、時には「日本に住むのに朝鮮語は必要ない」などの辛辣な言葉も浴びせられた。表札もほとんどが通名だ。様々な理由があるだろうが朝鮮人としての自分を否定し、門を開けることすら拒否する同胞社会の現実に触れ学生らは、「少しでも民族に触れてほしいと願う気持ちすら伝わらず、ショックだった」「子供たちがウリマルの名前すら知らないのはあまりにも寂しい」などと語った。
この間、1人でも多くの同胞児童を探し出すため日本の小学校や保育園にも足を運んだという韓由心さん(高2、朝青東京・足立支部)は、「民族の心を伝えることは、民族教育を受けた私たちにしかできないこと」と話した。最初の授業では遊んでばかりいた子供たちも、最後の授業では一生懸命勉強し、「来年もまた来たい」と口々に声を揃えたという。
自分で書いたウリマルの名前を誇らしげに見せる受講生の笑顔に、金陽愛さん(高2、朝青神奈川・南武支部)は「南武初級学校で行われている土曜児童教室にこれからは積極的に協力したい」と話していた。
子供たちを教えることの楽しさや同胞社会の厳しい現実の両側面を目のあたりにした学生たち。彼らにとって夏期学校の場はひと夏の経験に止まらず同胞社会で占める自分たちの位置や課題を新たに見いだす機会になったようだ。