大ヒット、「プルガサリ」
夏の暑さを吹き飛ばす勢いで巷の話題を呼んでいるのが共和国初の怪獣映画「プルガサリ−伝説の大怪獣」。7月4日から東京のキネカ大森で上映されるや、初日から立ち見が出るほどの入りで、日本のマスコミも取り上げているだけでなく、口コミによって人気も広がり、連日、満席の状況だ。今や隣で上映している米国版「GODZILLA」を完全に食う勢い。観客動員数は現在までに1万1000人と単館上映で異例の大ヒットを続け、今も記録を更新中だ。キネカ大森では9月4日までだが、5日からは都内の別の映画館で追加上映も決まり、「プルガサリ」人気はまだまだ止みそうもない。(嶺)
人気の秘密は迫力とヒューマン
「最初はこんなに当たるとは思ってもいなかった。米国版『GODZILLA』にぶつけて上映すれば、おもしろいかな、と思ったくらいだった」と、いうのはキネカ大森の支配人平野博靖さん。この現象に驚きを禁じ得ないといった感じだ。
「プルガサリ」上映は、評論家の江戸木純さんから、「朝鮮映画におもしろいのがあるよ」と言われたのがきっかけだった。
江戸木さんは、「すべてのファンが納得する本物の怪獣映画だ。いかにコンピュータ−・グラフィックが進歩してもあの味は出せない。職人芸というか本物だけが持っている物量のパワーがあふれている。これはハリウッドにも、日本にも決して真似のできない怪獣映画史上屈指の傑作だ」と絶賛する。
当初は20代、30代の怪獣マニアが情報を聞きつけて観にきていたが、今では学生はもちろん、サラリーマン、中年夫婦、若いカップルにまで層は広がっている。
「おもしろくて、ちょっと泣けた。期待した以上だった」(28歳、男性)。 「だんだん大きくなっていくところが、おもしろい。最後にひとひねりあって、プルガサリに怪獣を越えた哀愁を感じた」(39歳、男性)と、観終わった人は満足度大だ。
「『プルガサリ』そのものの怪獣としての格好良さもあるが、何よりもストーリーがしっかりしている。人間としての温かみが伝わる、ほろっとする場面もある。SFXやコンピューターに慣れている中で、ヒューマンなものが心に訴えるのだと思う」と、平野さんは「プルガサリ」人気をこう分析する。
館内で販売しているグッズやTシャツも予想以上の売れ行きと、ほくほく顔だ。
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「プルガサリ」はもともと、鉄を食べる怪獣が悪政に苦しむ民衆を助けるという朝鮮の民話をベースにしたもので、13年前、朝鮮芸術映画撮影所が日本の映画「ゴジラ」の特撮スタッフを招き、協力を得て1985年に完成させた作品だ。
「プルガサリ」の中には、「ゴジラ」俳優の薩摩剣八郎さんが入っている。
薩摩さんは13年経ってからの今回のヒットを「僕も大変気に入っている作品。特撮には4ヵ月かけた。上映すれば絶対ヒットすると思った」と言う。
1万人のエキストラを使ったスペクタクルな場面も多い中で、薩摩さんの一番の思い出のシーンは「プルガサリ」をやっつけようと悪者が檻に閉じ込め、火をつけてしまう場面だ。「炎の中から出て来る場面は苦労したが、後で見て迫力は十分あった」と満足気だ。
「『プルガサリ』は命をもらう主人公のアミにほのかな恋心を抱いている。人間の意思を持って、人間と生活も共にし、恋もする怪獣なんて今までいなかった。それに強くて格好いい。これは新しいヒーローだ」と、薩摩さんは、主演俳優さながらの入れ込みようだ。
13年前の撮影中の様々なことを思い出しながら「朝鮮のスタッフと最後は一体となって、感動して帰ってきた。続編の話があれば、ぜひ平壌に行きたい。プルガサリが両国関係の親善大使の役割を果たせればと思う」と語った。
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今後の上映日程
大阪 | 〜 8月28日 | テアトル梅田 |
京都 | 8月 29日〜 9月12日 | 京都南会館 |
名古屋 | 9月12日〜10月16日 | シネマスコーレ |
岡山 | 10月24日〜11月 6日 | シネマクレール |
広島 | 11月 7日〜 20日 | シネツイン |