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特集//8・15統一大祭典/本社記者ルポ


 【平壌発=本社記者羅基泰、柳成根】分断の象徴・板門店にこだまする、民族大団結と祖国統一を渇望する北と南、海外の全同胞の歌声と叫び――。14、15の両日開かれた「民族の和解と団結、統一のための大祭典」(統一大祭典)参加者たちは、53年という民族分断の長さを改めて痛感し、統一こそが民族の生きる道だとの思いを一層強めていた。

 

14日

「よく来たね」南の代表を抱きしめるハルモニ

 14日午後4時。祭典参加者たちによる平壌市内行進で、2日間の日程は幕を開けた。万寿台の丘からスタート地点の児童百貨店前までの沿道は花束を携えた市民であふれ返っていた。チマ・チョゴリ姿の高齢の女性が多く目に付いた。

 祭典旗を掲げたオープンカーを先頭に行進が始まると、道の両脇からは、市民たちの「祖国統一!」「民族大団結!」の声がひっきりなしに聞こえる。踊りながら農楽隊に付いて行くハラボジやハルモニ。即興のブラスバンドもあちこちに出没し、歌い踊る市民たちの姿が絶えない。

 先頭を歩く祖国統一汎民族青年学生連合(汎青学連)南側本部「韓国大学総学生会連合」(「韓総連」)代表のキム・デウォンさんとファン・ソンさんが近づくや、沿道からひときわ大きな拍手と歓声が上がる。2人も懸命に手を振って応えた。初老の女性が「よく来たね、よく来たね」と何度も涙声で叫びながら、キムさんを抱き締めた。

 女性たちの歓迎の列の中で孤軍奮闘していた金日成総合大学化学部教員のクァク・チャンソクさん(30)は、「南の学生らを熱烈に歓迎するのは、少しでも統一行事に寄与したいという市民の熱意の表れ。私も統一の新たな局面を切り開く一員として、ここに来ました」と誇らしげに語る。牡丹峰区域に住むパク・リョニさん(20)も、「海外同胞も『韓総連』もみな一つに団結して立ち上がってこそ、全民族の願いである祖国統一が実現する。私たち北の人民も思いは一緒です」と語る。

 6時からは青年中央会館で「民族の自主と大団結のための汎青学連統一の歌舞台」が催された。祖国滞在中の朝大生も加わり、会場は大勢の若者の熱気に包まれた。

 「韓総連」代表の2人の行く先々には必ず黒山の人だかりができた。みな、一緒に写真に写ろうとカメラの前に陣取る。手帳や帽子など自分の持ち物にサインを求める人もいる。ファンさんは差し出された手帳に「祖国統一のための聖戦で共にたたかおう 8・15 ファン・ソン」と記した。

 少々手荒な歓迎を受けながらもにこやかな表情の2人。北と南、海外と住む場所は違うが、同じ民族が一堂に集まり、その輪の中にいる喜びに満ちていた。2人は、南の青年学生がよく歌うという「最も遅い統一を最もすばらしい統一に」を、汎民連在日朝鮮人本部や「在日韓国青年同盟」の若者たちと共に披露。軽快なリズムに合わせたコミカルな振り付けで、その場を大いに沸かせた。

 

15日

参加者全員が肩組み「我らの願い」大合唱

 15日午前9時15分、板門店北側の板門閣前広場にファンファーレが鳴り響き、「民族の和解と団結、統一のための大祭典」の開幕が高らかに宣言された。「ネナラ チェイルロ チョア」(わが国が一番素晴らしい)の歌とともに、北と南、海外の同胞たちが一斉に入場し、広場は瞬時、「祖国統一」「民族大団結」と書かれた揃いのTシャツで埋め尽くされた。壇上にも参加者が勢揃いする。同じ民族が暮らす祖国の北側から板門閣を背に、軍事境界線越しに南側を見つめる南側代表たちの複雑な表情が、分断の現実を如実に表していた。

 祭典では、同胞団結大会、「民族の自主と大団結のための海内外同胞青年学生第3回連席会議」、「祖国の平和と統一のための98汎民族会議」、第3回汎青学連総会など様々な行事が行われた。汎青学連の行事では、自分たちの代に必ず統一を成し遂げるのだという、若者たちのひたむきな熱意とパワーがあふれていた。

 祭典は民族統一芸術祭典でクライマックスを迎え、板門閣前広場に設けられたステージには、朝鮮民族固有の文化芸術が花開いた。

 祖国分断の悲しみと祖国統一への思いをつづった数々の歌や舞踊、南北、海外を問わず、その場所に集まった参加者全員が肩を組んでの「我らの願い」の大合唱は、7000万同胞の最大の願いこそ祖国の統一であることを、参加者たちに改めて感じさせた。

 キム・デウォンさんは祭典閉幕直後、「以北同胞の盛大な歓迎を受けた時、自分が今まで考えてきた『幸福』というものが間違っていたこと、私たちの本当の『幸福』とは何かを改めて考えさせられた。統一への流れを止めることはできない。『韓総連』に対する以南『政権』の弾圧が続き、つらい気持ちで一杯だが、今日、南北が一堂に集まったのを見て、統一のその日は決して遠くないと確信した」と語った。またファン・ソンさんは、16日晩に平壌の木蘭館で催された宴会の席上、「南北、海外がこのように一堂に集まることが統一だ。祭典に参加して、祖国統一のためのたたかいは決して、私たちだけの孤独なたたかいではないと改めて感じた。7000万同胞がこうして出会えるよう、これからもたたかい続けたい」と話していた。

 

参加者達のコメント

■民族の統一意志を誇示

(在日朝鮮人平和統一協会副会長の白鐘浩さん、77)

 統一された祖国を次世代に渡そうとの私たち一世同胞の努力もむなしく、分断の歳月のみが流れてしまった。今回の祭典では、民族の統一意志を十分に示すことができた。全民族がもっと力を発揮すれば、統一は実現すると確信している。統一はスローガンで終わるのはでなく、実現させなければならない。そのために、全力を尽くして統一運動に寄与していくつもりだ。

■若者が運動の先頭に

(在日本朝鮮留学生同盟委員長の金勲さん、36)

 若い同胞の「統一観の稀簿化」が指摘される中、留学同所属の学生たちは、統一が実現してこそ不当な民族差別を根本的に解決できると信じ、統一を自分自身の問題として受け止めようと務めている。これからは若者が積極的に統一運動の先頭に立つべきだろう。私も統一運動で提起される課題を一つ一つ遂行していくことで寄与していきたい。

■多くの同胞に熱気伝えたい

(女性同盟大阪・住吉支部非専従委員長の李好枝さん、55)

 今回初めて、このような行事に参加してみて、言葉では言い表せない大きな感動を覚えた。北と南のすべての同胞が手をつないで共に歩む日は近いと確信した。日本に戻ったら一人でも多くの同胞にこの思いを伝えるとともに、女性同盟員みなが団結して統一へとつなげることができるよう、与えられた任務を果たしたい。

■在米僑胞も共に戦う

(ロサンゼルス在住の在米僑胞、呉沐七さん、61)

 「汎民族」の名のとおり、北と南、海外の僑胞が集う行事が実現したことはとても喜ばしい。とくに、朝鮮の古き良き文化を織り混ぜた民族統一芸術祭典はすばらしかった。在米僑胞の祖国への思い、統一への熱望は日増しに強まっており、北側の水害に心を痛めた多くの僑胞が募金運動に立ち上がるなど、積極的な努力を続けている。私たちの願いはただ一つ、南北の自主的平和統一だけだ。

■長すぎる分断53年

(トロント在住の在カナダ僑胞、鄭学必さん、62)

 在カナダ僑胞は、祖国を知る学習や行事を絶えず行い、統一実現に向けて頑張っている。そんな中、祭典に参加した「韓総連」代表2人の行動は、同じ民族として素晴らしい。53年という分断の歳月は長すぎる。彼らのような青年がいてこそ、統一も近付くだろう。しかし南には「国家保安法」が存在する。彼らも南側に戻ったら当局に捕まるのかと思うと心が痛む。

■私たちの代に実現を

(在中僑胞の黄貞淑さん、65)

 祭典に参加しながら、私たちの代に必ず統一を実現させなければならない、海外で暮らしてはいるが、祖国の統一のために全力で頑張らなければならない、とばかり考えていた。共に歌い踊りながら、統一を渇望する私たちの団結した力さえあれば、祖国統一は決して遠くないと確信した。

■必然的な歴史の流れ

(汎民連欧州地域本部共同議長の李俊植さん、52)

 わが民族はいつまで離れて暮らさなければならないのか。そうは決してできない。統一は必ず成し遂げられる必然的な歴史の流れだが、だからといって、じっと待っていれば実現するというものではない。統一のためには北と南、海外の同胞が固く団結しなければならないという真理を、今回の祭典は私たちに伝えてくれたと思う。

■祭典成功は大きな誇り

(「在日韓国青年同盟」所属の金潤浩さん、26)

 祖国の北側から分断の現実を目の当たりにし、複雑な心境だ。分断された祖国に来るのはこれが最初で最後にしたい。北側から統一実現を呼びかけ、今回の祭典が成功裏に行われたことは、大きな誇りであり栄誉だ。日本の同化政策の中で暮らす私たちにとって、弾圧に屈せず統一のためにたたかい続ける「韓総連」から学ぶことは多い。彼らと同じ気持ちでたたかうことが大切だと感じた。