sinboj_hedline.gif (1986 バイト)

ここが知りたいQ&A/最高人民会議第10期第1回会議


修正、補充された憲法で何が変わったのか

金日成主席を「永遠の国家主席」に/常任委員会を新設、政務院を内閣に

  修正・補充された社会主義憲法で大きく変わった点は何か。

  @序文が新たに設けられ、金日成主席の業績を称えて「共和国の永遠の主席」として戴いていくことを明記し、 A国家主席の項目がなくなり、B中央人民委員会、最高人民会議常設会議を廃止、C最高人民会議常任委員会を新設すると同時に政務院を内閣に改称、内閣総理が「政府を代表」するーーとしたことだ。

  序文は具体的にどのような内容になっているのか。

  金日成主席の業績について、「チュチェ思想を創始して共和国を創建した社会主義朝鮮の始祖、民族の太陽である」と称え、「国の統一のためにあらゆる労苦と心血を注ぎ、祖国統一の根本原則と方途を示し、全民族の団結した力で祖国統一を成就するための道を開いた」と強調している。

 つまり、金日成主席の思想と業績を擁護・固守し、継承発展させ、チュチェ革命偉業を最後まで成し遂げていくという共和国人民の確固たる決意をひろうし、それが「金日成同志の主体的な国家建設思想と国家建設業績を法制化した金日成憲法である」という表現に凝縮されている。

  最高人民会議常任委員会、内閣の役割は。

  最高人民会議常任委員会は、最高人民会議休会中の最高主権機関として立法権を行使する。また、対外関係において常任委委員長が外国と結んだ条約を批准、廃止、外国に駐在する代表の任命、召喚を行い発表することになった。

 内閣総理は「政府を代表」し、内閣は「最高主権の行政的執行機関であり、全般的国家管理機関」として行政全般の責任をとることになった。

  その他で変わったことは。

  旧憲法では、政務院(内閣に相当)に対する指導は中央人民委(第120条2項)が行ってきたが、今回の憲法では内閣総理が「内閣事業を組織し指導する」(第120条)と規定された。

 つまり、最高人民会議は内閣人事を選挙、召喚、任命(第91条9、10項)するが、行政事業の責任はすべて内閣が負うことになった。いわば「内閣責任制」が導入されたことになる。

 

金正日総書記が国防委委員長に推戴されたが

国家全般を統率、指揮/国の栄誉と民族の尊厳を象徴

  金正日総書記が国防委委員長に推戴、再任されたが。

  総書記は90年5月24日の最高人民会議第9期第1回会議で国防委員会第1副委員長に、そして93年4月9日の第5回会議で国防委員会委員長に選出され、今回再選された。この時、国防委員会の位置づけが大きく変わった。それまで(72年憲法)、国家主席が国防委委員長を兼任し、国家の一切の武力を指揮、統率していたが、92年の改正憲法で国家主席と国防委委員長を分離し、国防委委員長に一切の武力の指揮、統率権を譲渡した。

 そして今回、国防委員会委員長の位置づけがさらに大きく変わった。金正日総書記の推戴演説を行った金永南代議員(最高人民会議常任委員会委員長に選出)は、国防委委員長は「国の政治、軍事、経済力量の総体を統率、指揮して社会主義祖国の国家体制と人民の運命を守り、国の防衛力と全般的国力を強化、発展させる事業を組織、指導する国家の最高職責であり、わが祖国の栄誉と民族の尊厳を象徴し代表する」と明らかにした。

 つまり、国家全般を統率、指揮するのが国防委委員長であり、その国家の最高職責に金正日総書記が推戴されたことを意味する。

  国防委委員長が「国家の最高職責」になる根拠がよく理解できない。

  総合的に理解しなければならないだろう。今回、金日成主席を「共和国の永遠の主席」として戴いていくことを憲法に明記した。しかし、逝去された金日成主席が主席としての活動をできるわけではない。とすれば、政府を指導する党の最高職責にあり、朝鮮人民軍の最高司令官であり、国家のすべての武力を統率、指揮する金正日総書記が必然的に国家の最高職責を担うことになる。金永南代議員の推戴演説は、こうした事実を踏まえて認識しなければならない。

 また、「単独で社会主義を行っている」(金正日総書記)共和国を取り巻く状況を見れば、その社会主義を崩壊させようとする勢力との厳しい軍事的対峙下にある。例えば、基本合意(94年10月)にもとづく朝米対話は、「平和と戦争が表裏一体」の文書(小野・KEDO日本側事務局長)であるし、米国と日本は昨秋、共和国をターゲット(加藤前自民党幹事長)にした新ガイドラインに調印している。親善を謳い文句にした小樽など、共和国をにらんだ東海(日本海)側の民間港への米空母の寄港も定例化し、日本と南朝鮮軍との実働演習も今や公然と行われている。 こうした米・日・南朝鮮の軍事包囲網が強化される中で、共和国が国を守るために「軍事を国事中の国事」として優先視しなければならないのは当然である。米国が、あるいは日本が逆の立場に置かれた場合、同様の措置を取るだろう。だから、国防委委員長の位置も、必然的にランクアップせざるをえないのが現状である。しかし、これは巷間で事の本質も見えていない評論家と称する一群やマスコミが指摘するような「軍事独裁」云々とは、根本的に次元の異なる話である。

 

新内閣の使命は何か

経済の全事業に責任/経済司令部としての全権限付与

  新内閣の使命は。

  会議で聴取した、金日成主席が第9期第1回会議で行った施政演説「わが国の社会主義の優位性をさらに高く発揮させよう」を貫徹することだ。この演説では、社会主義制度の優位性を発揮させる、つまりチュチェ思想を具現した人間中心の社会主義を発展させることが強調されている。

 共和国の現状を見た場合、内外政治・軍事面は磐石だが、その一方で経済の再建問題が最大の課題として提起されている。洪成南新総理は内閣メンバーを代表しての宣誓の中で、「内閣はとくに経済事業に全責任を持ち、全般的経済事業に対する作戦と統一的指揮をしっかり行って、国の経済を決定的にもりたて人民生活を積極的に向上させることによって党と人民の期待に必ず応える」と述べたが、現状を踏まえての発言であったと言える。経済の再建に全力を傾けることが当面の使命である。

 金正日総書記はすでに、「政務院が経済司令部として行使できるすべての権限を与えた」と指摘している。そして昨年初、経済の再建、発展のためにすべての力を振り向けるよう具体的な指示も出している。

 今回の内閣の構成を90年5月の第9期第1回会議と比較すると、部署(総理と副総理職も含む)は46から33と13も減った。副総理は10人だったのが2人だけになった。33部署(総理、副総理も含めて35人)の責任者中、再任は11人だけで、新任は23人だ。リストラ・再統合、テクノクラートの登用が顕著である。中でも、経済の基幹部門(金正日総書記)である電気石炭工業省、採取工業省、金属機械工業省、建設建材工業省、鉄道省などが重要視されている。