京大大学院、朝鮮大学校卒業者に門戸開く
京都大学理学部の大学院である理学研究科(科長=尾池和夫理学部長)が、先月から今月にかけて行った修士課程入学試験で朝鮮大学校卒業者3人の受験を認め、うち1人が合格した。国立大の大学院が、各種学校扱いの朝大卒業生に門戸を開くのは初めて。日本の文部省が、各種学校扱いの朝大を卒業しただけでは大学院の受験・入学資格はないとしているのに対し、同研究科は独自の立場からこれを認めた。これが突破口となり、他の国立大や大学院が今後、朝鮮高級学校生や朝大生に門戸を開いていくことが期待される。
合格したのは、化学系を受けた鄭鎮洪さん(23、九州朝高出身)。来春、入学する。
理学研究科では3人の出願を受け、募集要項で入学資格について定めた「本研究科において、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」との項を適用した。
文部省は同研究科の決定に対し、「資格はない」とする従来の見解を改めて示したが、同研究科は「出願者に大学卒業と同等の学力があればよく、出身校を問題にするのはおかしい」(尾池科長)と主張し、方針は変えない姿勢だ。
現在、過半数の公私立大学がこれと同様の立場から、朝鮮学校など各種学校扱いの外国人学校生の受験を認めている。
しかし、国立大が正式に朝高生の受験を認めたことはない。大学院でも、公・私立の大学院への入学実績は多数あるが、国立で認められたのは今回が初。朝大から今春、複数の国立大学院に出願したところ京大以外は門前払いされた。
この問題では、同胞と朝・日の学生による「民族学校出身者の受験資格を求める全国連絡協議会」や「外国人学校卒業者の国立大学入学資格を考える国立大学教員の会」などが、門戸開放を求めて運動を展開している。最近ではこうした声が反映され、日本弁護士連合会や国連の子どもの権利委員会も日本政府に対し、是正勧告を行った。
合格した鄭さんは、「後輩たちには、より広く学問の機会が開かれることを願う」と話している。
【解説】今回の京大大学院の決定は、独自の立場から朝高生や朝大生に門戸を開放してきた公私立大の姿勢が、ようやく国立にも及んだものだ。これをきっかけに、他の国立大・大学院にもこうした姿勢が広がることが期待される。
しかし文部省は依然、「資格なし」との立場を崩しておらず、問題の本質的解決にはなお壁がある。
大学受験資格での差別問題で、日弁連や国連の子どもの権利委員会が是正を勧告した相手は日本政府だ。多くの公私立大や京大大学院のケースが示すように、現行でも大学が独自に門戸を開く余地はある。だが、これらの大学への有形無形の圧力を含め、現実に存在する在日朝鮮人の民族教育の権利に対する「重大な人権侵害」(日弁連勧告)の根本原因は日本政府の差別政策にある。
今後も引き続き、各大学に門戸開放を求めつつ、日本政府に根本的な政策の転換を迫ることが必要だ。