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ここが知りたいQ&A/共和国初の人工衛星「光明星1号」


初の人工衛星打ち上げに成功したが

平和利用、100%国産、1回の発射で軌道に

 朝鮮中央通信社が4日の報道で、共和国が8月31日、多段式運搬ロケットで初の人工衛星「光明星1号」を軌道に乗せることに成功したと伝えた。

 今回、打ち上げられたロケットと衛星は100%、共和国の科学者、技術者たちの知恵と技術、資材によって開発された「純国産品」で、1回の発射で打ち上げに成功し、軌道に正確に乗せた。

 ロケットは同日12時7分、咸鏡北道花台郡舞水端里の発射場から86度の方向に発射され、4分53秒後の12時11分53秒、衛星を予定した軌道に正確に乗せた。ロケットは3段式で、1段目と2段目は液体燃料、3段目は高性能固体燃料使用のロケットだ。

 1段目は発射後95秒で切り離され、発射場から253キロメートル離れた北緯40度51分、東経132度40分の朝鮮東海公海上に落下。

 2段目は144秒後に上部の頭部流線体を開いて266秒後に切り離され、発射場から1646キロメートル離れた北緯40度13分、東経149度7分の太平洋公海上に落下した。

 3段目は2段目が切り離された27秒後、衛星を軌道に乗せた。

 朝鮮中央通信社の報道は、衛星は地球から近地点218.82キロメートル、遠地点6978.2キロメートルの楕円軌道上を回っており、周期は165分6秒であり、これは宇宙の平和利用に寄与するものであると伝えた。

 100%国産技術によるロケット打ち上げは、旧ソ連、米、仏、日、中、英、印、イスラエルに次ぎ、世界で9番目だ。

 

なぜこの時期に、その意義は

建国50年輝かせる。商業衛星で外貨獲得も

 共和国は今年9月9日、建国50周年という大きな節目を迎えた。

 5日には約8年ぶりとなる最高人民会議第10期第1回会議が開かれた。金正日総書記が国家の最高職責である共和国国防委員会委員長に推戴され、名実ともに「金正日時代」の始まりを告げるものとなった。

 「光明星1号」の打ち上げ成功は、これらの慶事を輝かせる、科学者、技術者が成し遂げた最大の労働的成果だ。9日に行われたマスゲームにも打ち上げ成功を祝うシーンが登場した。

 共和国では金正日総書記の指導により、1980年代にすでに人工衛星を運搬できる多段式ロケットが開発された。金日成主席は生前、今やわが国でも人工衛星を打ち上げる時が来たと述べた。90年代初には衛星打ち上げに必要なすべての準備を完了した。

 打ち上げの目的は、@多段式運搬ロケットにより衛星を軌道に正確に乗せる技術を実現 A多段式運搬ロケットの構造工学的設計と操縦技術を完備 B宇宙空間の環境を研究し、その環境下で電子装置などが正確に作動するかを検証 C運搬ロケットと衛星観測システムを完成――することで、宇宙の平和利用に貢献する。ロケットには当該の探索機材のほか、飛行途中に予定のルートからそれた場合、安全地帯に誘導して自爆する装置が備えられている。

 今回の打ち上げ成功で、今後、商業衛星打ち上げのような、国際的な先端技術市場に積極的に進出して、食糧問題をはじめ経済問題を自力で解決するうえで必要な外貨をより早く、より多く獲得できる土台も確固と築かれた。

 

日本当局は「ミサイル発射」と騒いでいるが

米、南、中、ロも「人工衛星」と確認

 まず明確にしなければならないのは、「弾道ミサイル」ではなく、人工衛星だということだ。共和国は「光明星1号」と命名している。

 中国、ロシアは最初から確認していたし、その後、「弾道ミサイル」だと騒いでいた米国、南朝鮮すらも人工衛星であることを確認した。

 米国防総省筋は9日、「人工衛星と見られる多くの証拠がある」と語り、14日には米国務省のルービン報道官が記者会見で、共和国が打ち上げたものは「人工衛星を搭載したものだった」と、米政府の公式見解を発表した。

 いまだに「弾道ミサイル」をうんぬんしているのは日本当局だけだ。

 今回の「ミサイル騒動」は、在日米軍司令部が8月31日、「発射」情報を防衛庁に知らせたことから始まった。

 しかし朝鮮アジア太平洋平和委員会スポークスマンは2日に発表した談話で、「(日本が)その内幕も知らずに早々とわれわれを中傷するのは、われわれに対する根強い敵視政策から出発したものだ」とし、日本政府が軽挙妄動せず、敵視政策を直ちに中止するよう警告していた。

 日本当局は「弾道ミサイルも人工衛星も脅威に変わりない」と開き直り、慌ててとった「制裁措置」は続けると居直っている。

 同盟国の米・南すらも人工衛星とはっきり認めているだけに、日本当局の孤立ぶりは一層目立っている。

 それだけに振り上げたこぶしをどう降ろしてよいのか分からず、「弾道ミサイル」うんぬんと引き続きヒステリックに騒ぎ必要以上に「北の脅威」を煽っているのだ。

 

米、南は軌道に乗せるのに失敗したというが

100周目と共和国は具体的データ公表

 そうではない。共和国は多段式ロケットで人工衛星「光明星1号」を軌道に乗せることに成功した。

 モスクワ9月4日発イタル・タス通信によると、ロシア宇宙観測センター当局者は、共和国が人工衛星打ち上げに成功したことを確認したとし、「この衛星を宇宙空間物体に登録した」と語った。

 軌道に沿って回っている「光明星1号」からは、温度と圧力、電源状態をはじめ探測資料が送られている。

 労働新聞14日付は、衛星が13日午前8時24分から11時17分の間(平壌時間)に地球周回100周目に達したとし、100周目の周期は、太平洋上の米国ハワイ島の北部上空からチリ、アルゼンチンなど南米諸国を経て大西洋を横断し、ナミビア、アンゴラ、民主コンゴ、エチオピア、パキスタン、中国、共和国上空を通過した、などと具体的データを公表している。

 衛星打ち上げ成功が、軌道に乗ってから発表されるのはこれまでの例から見ても一般的だ。中国が1970年4月24日に初めて人工衛星を打ち上げた際にも、衛星が軌道に乗ったのを確認してから発表(翌25日夜)している。

 また、ロケットが衛星を軌道に乗せるには最低でも高度200キロメートル、速度毎秒8000メートルを要するが、労働新聞8日付に掲載された人工衛星運搬ロケットの打ち上げ実験略図によると、衛星軌道進入点は時間293秒、速度8980メートル毎秒、高さ239.2キロメートル、距離587.9キロメートルと条件を十分に満たしている。

 

日本は「領空侵犯」「事前通告」を云々するが

大気圏外は領空ではない。初の衛星打ち上げはソ、米、中も通告せず

 「領空侵犯」うんぬんは一方的な言いがかりだ。一般的には高度100キロメートルまでが領空と言われる。しかし人工衛星はそれ以上高い大気圏外(=宇宙)を飛ぶので、その通過は当然、「領空侵犯」「主権侵害」にはならず、国際法違反ではない。額賀防衛庁長官も「宇宙空間には主権は及ばない」と領空侵犯には当たらないことを認めている。

 事前通告うんぬんも日本当局のこじつけに過ぎない。国際社会で平和目的に利用される人工衛星を打ち上げることは、その国の主権に属する問題で、過去にも事前通告なしに衛星を打ち上げた例はある。人類史上初めて人工衛星打ち上げに成功したのは旧ソ連。1957年10月4日のことだが、事前通告はなく翌5日に発表された。当時、日本のマスコミも「ソ連が抜打ち的に人工衛星第1号打上げに成功を発表」(朝日新聞58年2月2日付)と表現していた。米国も中国も初の人工衛星打ち上げの際には事前通告はなく、成功後に発表している。

 ロケットや人工衛星は宇宙法の適用対象で、宇宙法の一つ、宇宙条約は、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用は、すべての国の利益のために、その経済的又は科学的発展の程度にかかわりなく行われるものであり、全人類に認められる活動分野である」(第1条)と規定している。これに基づけば、衛星の打ち上げは共和国が主張するように、その国の主権問題だ。

 日本側はことさら事前通告がなかったことにこだわっているが、逆に言えば過去日本は68回衛星を打ち上げた際、共和国に事前に通知したことはない。

 

なぜ日本は共和国に対して過剰反応しているのか

根深い敵視政策と民族蔑視の集中的表れ

 日本は米軍部の情報だけに頼って「ミサイル発射」と騒ぎ立て、@日朝国交正常化交渉の凍結 A食糧支援の棚上げ B朝鮮半島エネルギー開発機構への協力見合わせ C直行チャーター便の運航中断などの「制裁措置」を発表した。そればかりか、国連にまで持ち出した。さらに、額賀防衛庁長官は、自衛隊が北朝鮮のミサイル発射基地を反撃することは自衛権の範囲とまで言った。

 このため日本では右翼が連日、総聯の各機関や朝鮮学校生徒、あげくは共和国に友好的に接する日本の人々への嫌がらせ、脅迫を繰り返している。

 しかも日本政府は米国が衛星と確認した後も、「制裁を解除しない」と言い張っている。

 こうした根底には、朝鮮民族全体への根深い蔑視と共和国に対する敵視がある。日本は共和国に対して、いまだに植民地時代に犯した罪について謝罪・補償していない。

 日本政府の言動は今や、東北アジアの平和と安全をも脅かそうとしている。日本は共和国を「敵国」と断定し、「反撃」さえも示唆した。その一方で、軍事大国化を進める口実にしている。衛星打ち上げ直後から、朝鮮半島有事に自衛隊が米軍との共同作戦で参戦する体制作りをめざす「新たな日米防衛協力のための指針」を成立させる動きが急になり、さらに米国の核戦略に食い込まれる戦域ミサイル防衛(TMD)構想を進めようとしている。日本が独自に軍事衛星の一つである偵察衛星を導入する問題については、より具体性を帯びて検討されている。