共和国初の国産人工衛星「光明星1号」基礎知識
共和国は8月31日、国産で初の人工衛星「光明星1号」打ち上げに成功した。打ち上げ能力、使用目的や周回状況など共和国の人工衛星問題を一から知るための基礎知識を並べた。(基)
打ち上げ能力
3段式ロケットで東向きに/地球の自転利用
人工衛星を打ち上げるには、上昇・加速させるための強力な輸送手段が必要だが、飛行機ではこれだけの高度と速度を達成することは不可能だ。そのため唯一の手段がロケットで、現在ではこれに代わるものはない。共和国では、多段式ロケットで初の人工衛星「光明星1号」打ち上げに成功した。ロケットは3段式で、1段目と2段目は液体燃料、3段目は固体燃料を使用している。
衛星は咸鏡北道花台郡舞水端里の発射場から8月31日12時7分、86度の方向で発射された。発射の方角について言うならば、ミサイルの場合は命中精度の確認が重要なため方角にはこだわらないが、「衛星打ち上げでは通常、地球の自転を利用するため、東向きに行われる。(共和国の場合)ほぼ真東の軌道をそのまま進むと、地球の引力の影響で次第に南向きに進路を変え、ハワイに向かう」(朝日新聞22日付)。
共和国が打ち上げた人工衛星の運搬ロケットの落下点を見ると、1段目は北緯40度51分、東経132度40分の朝鮮東海公海上に。2段目は北緯40度13分、東経149度07分の太平洋公海上に落下した。
図でも分かるように共和国が打ち上げた人工衛星は、発射場から東に向かって飛んでいる。こうしたことから日本が言い張る「ミサイル発射」ではなく、衛星打ち上げであることが分かる。日本のロケット専門家も「(共和国が)人工衛星打ち上げを試みたとすれば、自然だ」(朝日新聞22日付)と語っている。
一方、日本防衛庁は2段目分離後の3段目について「推進力はなかった」と発表したが、米国は、「加速している小さな物体があった」(朝日新聞9月22日付)としている。
運搬ロケットが衛星を軌道に乗せるには、引力に逆らって高度200キロメートルまで打ち上げると同時に、横向きに毎秒8000メートル近くまで加速することが、最低限必要となる。
労働新聞8日付に掲載された運搬ロケットの打ち上げ実験略図によると、衛星軌道進入点は時間293秒、速度毎秒8980メートル、高さ239.2キロメートル、距離587.9キロメートルと条件を十分に満たしている。
使用目的
実用衛星打ち上げの資料収集/先端技術市場進出も
人工衛星はその使命に沿って、科学衛星や実用衛星、軍事衛星などに分類される。科学衛星は太陽系などを研究したり宇宙空間を調査するためのもの。実用衛星は文字どおり社会生活の実利のために使われ、用途は広い。通信衛星、放送衛星、気象衛星、資源探索衛星、航行・測位衛星など種類も多い。日本では、天気予報などでよく使われる気象衛星「ひまわり」が馴染み深い。
共和国初の人工衛星「光明星1号」は、今後、実用衛星打ち上げの資料を得るために打ち上げられ徹頭徹尾、宇宙の平和利用に貢献するのが目的。そのため衛星には必要な探測機材が設けられた。現在、温度と圧力、電源状態などの探測資料が送られてきている。
今回衛星を軌道に乗せた意義は、@多段式運搬ロケットにより衛星を軌道に正確に乗せる技術を実現 A多段式運搬ロケットの構造工学的設計と操縦技術を完備 B宇宙空間の環境を研究し、その環境下で電子装置などが正確に作動するかを検証 C運搬ロケットと衛星観測システムを完成――したことにある。
これによって、今後、商業衛星打ち上げのような、国際的な先端技術市場に積極的に進出して、食糧問題をはじめ経済問題を自力で解決するうえで必要な外貨をより早く、より多く獲得できる土台も築かれた。
周回状況
楕円形で周期は165分6秒/10月5日に肉眼観測可能
人工衛星の飛行経路を軌道と呼ぶが、その形は円形または楕円形で、その中心(楕円形の場合は焦点の一つ)は地球の中心と一致する。
軌道を表すうえで重要なのは地表からの高度だ。
円軌道の場合には高度は一定である。楕円形の場合には、地球に最も近づいた時の近地点高度と、最も離れた時の遠地点高度で表す。
高度に応じて、衛星が地球を一周する時間、すなわち周期が決まる。
「光明星1号」の軌道は楕円形で、最近地点218.82キロメートル、最遠地点6978.2キロメートルの楕円軌道に沿って周っており、周期は165分6秒である。
労働新聞14日付は、衛星が13日午前8時24分から11時17分の間(平壌時間)に地球周回100周目に達したと伝えた。
100周目の周期は、太平洋上の米国ハワイ島の北部上空からチリ、アルゼンチンなど南米諸国を経て大西洋を横断し、ナミビア、アンゴラ、民主コンゴ、エチオピア、パキスタン、中国、共和国上空を通過した。
衛星は10月5日頃、肉眼で観察できる時間帯に共和国上空を通過する予定だ。
朝鮮中央通信
6年前に人工衛星開発/ロケット操縦技術など自力で
【21日発朝鮮中央通信】 共和国で打ち上げた運搬ロケットと衛星は、ロケットと操縦システム、燃料と金属、非鉄金属資材、発射場設備と操縦技術に至るまで徹頭徹尾、自力更生の産物である。
金正日総書記は、久しい前から自力で宇宙開発分野を開拓する設計図を示し、エネルギッシュに指導してきた。科学者たちが研究事業で難関に直面した時も、初めが肝心、私は必ず成功するものと信じると励ました。
そして科学者と技術者は自力で宇宙科学分野を開拓し、宇宙開発を保証する工業の基盤も整えられたことで、初の人工衛星打ち上げを1回で成功させる成果を遂げることができた。
科学者と技術者は、初の人工衛星に総書記を称えて「光明星」との名を付けた。この「光明星1号」と運搬ロケットは、6年前に開発された。その時から科学者と技術者は、実験衛星打ち上げを準備しながら、実用衛星の研究で成果をあげた。
宇宙科学およびロケット技術分野の展望は明るい。現在、この部門には立派な科学者と技術者がおり、強力な工業の基盤も蓄積されている。(朝鮮通信)
労働新聞論評
公正性欠く「2重基準」/国連の「報道向け声明」
労働新聞22日付は、「公正性のない処理の仕方」と題する論評を掲載し、次のように指摘した。
15日の国連安全保障理事会非公式協議で安保理議長は、共和国の人工衛星打ち上げ問題に対する日本の立場を込めた「報道向け声明」を発表した。
すでに何度も明らかにしてきたように、今回共和国が人工衛星を打ち上げたのは、誰かを威嚇するためではなく、徹頭徹尾宇宙を平和的に利用するためだ。
宇宙は人類の共有対象であり、宇宙を平和的に利用するために衛星を打ち上げるのはそれぞれの国の自主権に属する。
現在、地球の軌道上に各国が打ち上げた数百数千の衛星が自由に周回しているのは否定できない事実だ。これについて誰もあれこれ言ったことはない。
にもかかわらず、国連安保理が不純な政治目的を企む日本にそそのかされて、共和国の人工衛星打ち上げについて「憂慮」や「遺憾」を言うこと自体、すでに現実を否定する態度であり、自らの姿勢にそぐわない処理の仕方だ。
これまで日本をはじめとする多くの国々が人工衛星を競争して打ち上げた際、共和国に一度たりとも事前通告したことはない。
このような国々が国連安保理で共和国の人工衛星打ち上げについて話し合ったこと自体奇怪だ。
ある国は事前通告しなくても良く、ある国だけは必ずしなければならないという論理は通じない。
趣旨や経緯がどうであれ、今回の国連安保理非公式協議での「報道向け声明」発表は、安保理がすでに公正性を欠き、2重基準に籠絡されていることを示している。警鐘を鳴らし問責を受けねばならない対象は共和国ではなく、罪多き過去を認めもせず補償もしないまま侵略と戦争策動に拍車をかけている日本軍国主義勢力である。
現在、日本政府が共和国の人工衛星打ち上げ問題をめぐって騒ぎ立て誹謗中傷しているのも、究極的に見れば朝鮮人民の100年来の宿敵としての自己の罪を隠し、侵略戦争遂行のための軍事大国化の口実を得ることに真の意図がある。
共和国は今回、安保理が取った立場と処理の仕方を、共和国の自主権に対する冒とく見なし断固排撃する。(朝鮮通信)
通じぬ「事前通告」説
労働新聞23日付は、日本が共和国の人工衛星打ち上げについて「事前通告」をうんぬんしていることに対して次のように指摘した。
小渕首相は国会での質疑で、共和国の人工衛星打ち上げと関連した「納得できる説明と行動がない限り」強硬な姿勢で対処すると述べ、共和国が事前通告しなかったことが「国際法違反」にあたるとまで言った。国連駐在日本代表も「事前通告」をうんぬんし、マスコミも「危険千万な行為」と非難した。一体日本が何だからと言って共和国が事前通告するというのか。
日本は1970年代からこれまで数十個の衛星を打ち上げたが、共和国に事前通告したことはない。
にもかかわらず、日本当局者が「事前通告」をうんぬんし「遺憾」「愚弄」「強力な対応」をうんぬんするのは、日本の破廉恥な姿勢を示すものである。
自分たちはしたいようにし、共和国は自分たちに「事前通告」をして「承認」を得なければならないとの日本式の傲慢な態度には驚愕を禁じ得ない。
日本当局者が「事前通告」をうんぬんするのは、反共和国熱を煽り、自らの政治的野心を実現するのに共和国の衛星打ち上げを利用しようとしているからだ。
日本当局者の「事前通告」説は、9月4日に共和国が人工衛星打ち上げの成功を公式に発表した後も執ように続いている。
日本当局者の「事前通告」説は他人の成果を嫉妬する日本の性根と反共和国敵対感情を自ら露にしたものだ。(朝鮮通信)
反共和国感情煽る日本
労働新聞22日付は、共和国の人工衛星打ち上げを政治目的に利用しようとする日本当局者の態度を非難して次のように主張した。
NHKは8月31日、共和国が「弾道ミサイル」を発射したと報道したが、これは日本が直接確認したものではない。米国の通報でやっと「弾道ミサイル」の発射と着弾予想地点について知った。その時から、日本の高官、自民党や各政党の指導的人物が騒ぎ始めた。
日本当局者に理性があれば、少なくとも事態の真相をまず把握し口を開くべきだった。にもかかわらず、米国の「通報」だけを信じて共和国を中傷した。これは自らの知識のなさを暴露するものだ。
一方、日本政府は当初「弾道ミサイル」が朝鮮東海に落下したと発表したが、次には弾頭部分が日本上空を通過し三陸沖に着弾した可能性が高いと発表するなど、具体的な内幕も知らない自らの体裁の悪さを露にした。
海上保安庁の護衛艦やP―3C早期警戒機で周辺海域を捜索しようとしたが、ミサイルが落ちたと確認できる痕跡は見つからなかった。こうした中、衛星打ち上げを共和国が報道した。共和国は報道で人工衛星を、いつ、どこで、何時に打ち上げ、軌道に正確に乗せたかを明らかにした。「ミサイル発射」説は粉々に砕けた。にもかかわらず、防衛庁長官らは、弾道ミサイルだった可能性が強いとの認識を変えない、との立場に固執した。
これによって、日本当局者が人工衛星打ち上げを「弾道ミサイル発射」と騒ぐのが、単に知識の無さからきた軽挙妄動ではないことが明らかになった。根深い対朝鮮敵対感情を秘めた日本は、共和国の衛星打ち上げを反共和国熱を煽るのに利用している。(朝鮮通信)