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1999年―展望―朝米関係


 政治・経済の正常化へのプロセスを明記した朝米基本合意文が1994年10月に調印されてから5年目を迎える今年、朝米関係はどう動くのか。昨年は米国が合意文を誠実に履行しなかったため大きな前進がなかったばかりか、逆に緊張の度は深まった。米国は共和国の地下施設に対する不当な「査察」を要求し、平壌侵攻を狙った「5027作戦計画」を「軍事作戦」として完成させるなど、朝鮮半島情勢をいっそう緊張させた。今年の朝米関係を展望するうえでのカギは2つ。米国が基本合意文を誠実に履行するのか、また懸案問題解決のための対話をいかにして継続していくのかだ。(基)

 

基本合意文

経済規制緩和が課題/重油費用の確保も

 朝米基本合意文では、共和国が黒鉛減速炉と諸関連施設を凍結する一方、米国は2003年までに共和国に軽水炉(100万キロワット2基)を提供し、1号軽水炉が完成するまでのエネルギー損失分として重油を毎年50万トン補償することが明記されている。

 共和国は合意文調印後、1ヵ月以内に義務付けられた黒鉛減速炉の完全凍結を実施し、96年5月からは核燃料棒の密封作業を開始、「1月中には完了」(朝日新聞3日付)する。密封作業は97年中にも終了する予定だったが、米国が重油納入を遅らせたため、作業は一時中断。昨年9月の朝米ニューヨーク合意で米国が合意文の履行を約束したため、同月から再開された。

 97年8月に咸鏡北道琴湖地区で基礎工事に着手した軽水炉建設は、昨年夏には本格工事に入る予定だったが、1月以降に延期された。朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)関係筋によると、軽水炉が完成するのは2007年以降になると言う。

 重油納入では、97年度分(同年11月〜98年10月)が期限をオーバーしたものの今年2月には完了する。しかし98年度分の予算拠出(3500万ドル)について米政府と議会は昨年11月、クリントン米大統領が6月1日までに、共和国のミサイル開発と輸出防止に米国が努力するなどの4項目を保証できれば1500万ドルの拠出を認め、残りの200万ドルについては6月1日以降、地下施設疑惑に関する米国の懸念を払うための措置を共和国と合意するなど3項目の保証を得ることを必要としている。

 ミサイル問題や地下施設問題は合意文にはない。軽水炉提供問題は、米国がすべての責任を負って推進することが朝米共同報道文(95年6月)にはっきりと明記されている。

 また基本合意文では、調印後3ヵ月以内に、貿易と投資の障壁を緩和することになっている。共和国は95年1月、米国に対する一切の経済障壁を撤廃。米国も同月、一部の規制措置を緩和したが、4年が過ぎた今も規制の全面解除には至っていない。

 こうして見ると、米国は「同時行動原則」に基づき行われるべき基本合意文をまともに履行しておらず、共和国が「米国が破棄するならば破棄しても差し支えない。空約束にこれ以上、耳を傾けずに合意文を破棄し、元来われわれが計画した朝鮮式で行こう」(外務省スポークスマンの10月13日付談話)と主張するのも当然だ。合意文を履行して関係改善へと向かうのか、それとも合意が白紙に戻されるかどうかは、全面的に米国の態度にかかっている。

 

懸案問題

対話解決がカギ/「地下施設」、ミサイル問題など

 朝米の懸案問題としては昨年、共和国の地下施設問題に関する協議の第1ラウンド(平壌で11月16、17日)、第2ラウンド(ニューヨークとワシントンを往復して12月4、5、7、8、10、11日)が行われた。米国は「地下核施設」だとして「査察」を要求しているが、共和国はこれを否定、査察には補償金が必要だと主張。米議会筋によると、「共和国側は『安保関係施設は一度外国の視察を受け入れると二度と使えなくなる』と指摘、補償金は視察を受けた施設に代わる新施設建設のための資金に必要だと説明」(読売新聞12月12日付)した。第3ラウンドは、第4回4者会談(ジュネーブで19〜22日)に先立つ16、17日の両日に開かれる。

 ミサイル協議の再開は、地下施設問題解決の方途が合意されれば日程に上るだろう。

 朝鮮戦争時に共和国側で死亡した米兵遺骨共同発掘作業は、昨年計5回実施されたが、今年は6回に増えるほか、発掘期間延長など昨年より拡大される。

 また朝鮮半島の軍縮会談として昨年は、4者会談(第2、3回会談)のほか朝鮮人民軍と国際連合軍間の将官級会談が板門店で3回開かれた。いずれの会談でも共和国は、朝米平和協定締結と米軍撤収を主張。6日付労働新聞も、朝鮮半島の緊張状態を解消して平和的局面を開くためには「朝米間で新たな平和協定が締結されなければならない」と指摘した。

 一方、対北政策見直しのためのペリー政策調整官が「2、3月ごろに新たな北朝鮮政策を打ち出す」(読売新聞3日付)と言う。米国は強硬姿勢に出てくるとの話もある。朝米間の対話のチャンネルが拡大される中、懸案問題解決のための新たな枠組みが設けられるのか。この時期に朝米間の駆け引きが繰り広げられることが予想される。しかし問題解決へと進むかどうかは、米国が対話の道を選ぶのか、あくまで力の政策にこだわるのかどうかにかかっている。つまり展望が開けるかどうかは米国の対応次第なのである。