金剛山歌劇団民族器楽演奏会
3月まで都内5ヵ所で行われる「金剛山歌劇団民族器楽演奏会―朝鮮の民族楽器による音楽の夕べ」の初公演が18日、東京・墨田区の墨田トリフォニーホールで上演され、同胞と日本市民ら160余人が観賞した。民族楽器に対する理解を深めてもらおうと同劇団が企画したもので、昨年に続き2回目。観客らは悠久な伝統を持つ朝鮮の民族芸術に触れ、その素晴らしさと魅力をたっぷりと堪能していた。
演奏会ではオープニングの合奏「打令―霊山会相から」をはじめカヤグム独奏「ピョンヤンの春」や打楽器三重奏「巫女の舞」、竹管楽器重奏「故郷に春が来た」など、朝鮮の代表的な民族器楽曲とともに、日本の琴で有名な曲「春の海」(カヤグム独奏)や映画の主題曲「もののけ姫」(ヘグム独奏)、インカの古い曲といわれ、サイモン&ガーファンクルがレパートリーに取り上げた「コンドルは飛んで行く」、アイルランド民謡「ロンドンデリーエアー」(ともに竹管楽器5重奏)など多彩なレパートリー12演目が披露された。
とくに注目を浴びたのはヘグムの独奏で披露された朝鮮の5大歌劇の1つ、「ピパダ」。ヘグムの持てる限界に挑んだ難曲と言われるが、哀愁を帯びながらも透き通った繊細な音色を生かした演奏は観客から拍手喝采を浴びた。コムンゴの2重奏「出鋼」も迫力満点で、好評を博していた。
演奏会では司会者による、朝鮮の民族音楽・楽器の特徴についての解説もあり、観客の興味を引き付けていた。
15年ほど前から各地の朝鮮学校生徒をはじめプロ、アマを問わず民族楽器を演奏する同胞らは、祖国でレッスンが受けられるようになった。それによって在日同胞演奏家の水準は飛躍的に向上し、専門家の数も増えた。この日の出演者も同劇団の3、4世が中心で、ほとんどが朝鮮学校で民族楽器を習い、祖国でのレッスンを受けながら民族の心を受け継いだ民族楽器演奏家たちだ。
シンガーソングライターの小山佳衣さんは「朝鮮の民族楽器の音色がとてもきれいなのに驚いた。『静』の中にも力強さが込められており、西洋の楽器にはない魅力を感じた」と話していた。
今後の公演日程(1月〜3月)
公演場所 |
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1月 | 23日 | アミュー立川(立川市民会館)小ホール |
27日 | なかのZEROホール | |
3月 | 13日 | 府中の森芸術劇場ふるさとホール |
17日 | 文京シビックホール |
代表的な民族楽器
古来からの良さを生かし/改良加え音階・音量豊かに
現在、朝鮮民謡や器楽曲を演奏するのに使われている民族楽器は、古来からの音色と奏法の特色を残しながらも技術的な改良を加えたものがほとんどだ。改良によって音量が飛躍的に豊かになるとともに、より幅広い音階の演奏が可能になった。公演で使われた中から、代表的な民族楽器を紹介する。
●カヤグム
朝鮮固有の弦楽器
紀元前に作られた朝鮮固有の弦楽器の一つ。6世紀頃に伽○国(○は人偏に耶)のウルクをはじめとする音楽家たちよって庶民にも広く紹介された。名前の由来もここから来ている。元来弦は12本だったが、今では改良が重ねられ21弦となった。
日本の琴とは違い、爪をつけずに直に指で弾く右手の多様な奏法、左手による複雑で繊細な弄弦(ロンヒョン=音を揺らしたりしゃくりあげる奏法でビブラートの一種)が特徴的だ。
構造が簡単で比較的覚え安いことから長く親しまれており、愛好家も多い。
●ソヘグム
紀元前に作られる
紀元前に作られた楽器で、フチンと呼ばれていた。中国にも二胡や胡琴の総称として胡弓があるが、ソヘグムは胡弓の中でも最も古い楽器として知られている。
本来は弦が2本で、朝鮮の弦楽器の中でも弦数が一番少なかった。現在は弦が4本に増え、ヴァイオリンに近くなっている。
形、音色とも中国の古琴に似ているが古琴よりもより繊細で、透き通った美しさを持ちながらもどこか哀愁を帯びた寂寥感を持つ音色が特色である。
●タンソ
竹でできた縦笛
朝鮮の竹で出来た縦笛で竹管楽器の一つ。
もとは唐の楽器であったトゥソンの短いもので、15世紀頃から主に朝鮮北部で親しまれてきた。アンデス地方にもタンソと良く似た縦笛、ケーナがあり、構造はほとんど同じ。
現在は、クラリネットやオーボエのようにチタン、黒檀で作られるようになった。またキーを付けることによって、従来の5音階から12音階の演奏が可能になった。その澄んだ音色にはファンも多い。
●ヤングム
先祖はイランの楽器
18世紀末に作られた。もとは左手で抱えながら演奏するとても小さな楽器で弦も18弦で音量も貧弱だった。
先祖はイランのダルシマーという楽器。このダルシマーが西洋に渡りながらチェンバロ、ピアノと発展し、中国ではヤンチムが、朝鮮ではヤングムが造られた。
80本のピアノ線が張られ、フェルトをつけた竹のバチで叩くときらびやかな音を奏でる。また、共鳴板を付けたことにより、非常に弾力のある音が出るようになった。
器楽合奏や伴奏にはなくてはならない存在となっている。