本の紹介/企業ドメインの戦略論 榊原清則著
「ドメイン(Domain)」。英和辞典を引くと(1)領地(2)(知識・思想・活動などの)領域、分野…とある。
企業ドメインとは、「企業の活動の範囲や領域のこと」(著者)であり、そのドメインをどのように把握したらよいかを考えたのが本書だ。
自らのドメインをどう定義するかは、その企業の発展の在り方を決定づける。著者は、世界に冠たる松下電器を例に挙げて言う。
「…仮に松下幸之助が自分の会社をあくまでもプラグやソケットの会社として理解し、初期の成功に十分に満足していたとしたら…今日の松下電器産業はなかったであろう」
日本における企業の経営環境は激変期を迎え、目先の結果にとらわれていては、持続的発展は困難と言われている。経済の伸びに支えられた「自然な成長」が保障されなくなった今、本書はまずドメインの再定義が必要だと提案する。
(中公新書・185ページ・660円)
◇さかきばら・きよのり 1949年生まれ。慶応大教授。