映画/エリザベス(英国)


 25歳でイングランド女王となり、後に「ヴァージン・クィーン」として君臨したエリザベス1世。大英帝国の繁栄の基礎を築いた女王の波乱の半生を壮大なスケールで描く。

 熱心な旧教信者だったメアリ女王の時代、新教徒が火あぶりの刑に処せられるシーンから映画は始まる。このシーンに象徴されるように、宗教対立が深刻化していた16世紀の英国。エリザベスは新教を復活させるが、そのことでローマ法王から暗殺の司令が下される。さらに、勢力拡大を狙うフランスとスペインは政略結婚を申し入れてくる。

 陰謀、裏切りが渦巻く中で、恋と遊びに夢中なか弱かった乙女が、自らの敵や裏切り者を次々粛清、確固たる地位を持った権力者に成長していく姿は圧巻だ。

 最後のシーン。長い髪をばっさり切り、「私は英国と結婚した」と宣言するエリザベス。実は自身が聖母マリアのような偶像(イコン)となり、人々の愛情の受け皿になるのが目的だった。

 もう一つの核である宗教対立は、現代にも重なる。

(監督=シェカール・カプール、脚本=マイケル・ハースト、主演=ケイト・ブランシェット)