教えて 生活と権利/国籍


 在日同胞は、相続、婚姻、資格取得、社会保障など、様々な局面で法律や制度上の複雑で難しい問題にぶつかる。その時々で起こる疑問や対応方法などについて、各方面で活躍する在日の専門家に答えてもらう。

 

Q 「朝鮮」「韓国」は国籍ではないの?

A 外国人登録に表示されたものは国籍を意味しません

  外国人登録証明書の「国籍」欄に記載されている「朝鮮」または「韓国」表示は、実はその人の国籍を意味するものではないと聞いたのですが、本当ですか。

  日本国籍に帰化した人を除き、外国人登録をしている在日同胞には、外国人登録上の「国籍」欄に「朝鮮」と記載されている人と「韓国」と記載されている人がいます。

 しかし、日本国の外国人登録上国籍欄の表示が「朝鮮」または「韓国」となっていても、ただちにそれは国籍を意味しません。

 事実、中華人民共和国国民も中華民国(台湾)国民も、外国人登録上の国籍欄の表示は「中国」です。統一前の東ドイツ(ドイツ民主共和国)国民も、西ドイツ(ドイツ連邦共和国)国民も、いずれも日本の外国人登録上の国籍欄の表示は「ドイツ」でした。

 これは日本の外国人登録上の表示が、その外国人の国籍を表示するものでないことを示すものです。

 在日朝鮮人の外国人登録上の国籍欄の表示も、日本に外国人登録制度が導入された当時(1947年)から南北分断後も、「朝鮮」の表示で統一されていました。しかし日本政府はその後、「韓国」官憲発給の国籍証明書等の資料を添えて国籍の表示を「韓国」と記載して届出をした場合は、国籍欄の表示を「韓国」とするようになりました。

 これは、外国人登録上の「国籍」欄の表示に前記のような国々とは異なる取り扱いを行うもので、明らかに差別的であるばかりか、在日同胞の生活に様々な混乱をもたらしています。

 以上のように「朝鮮」表示も「韓国」表示も国籍を直ちに意味しません。

 

Q 国籍とはどのように決められるの?

A それぞれの国籍法によって決められます

  では、在日朝鮮人の国籍はどのように決められるのですか。

  国籍とは、特定の国家の構成員としての資格や地位を言います。ある国の国籍があるかどうかを決めるのは、その国の国籍法によって決められるというのが国際社会で認められた原則です。

 たとえば、Aという人について、X国の国籍があるかどうかは、X国の国籍法によって決められ、Y国の国籍があるかどうかはY国の国籍法によって決められます。その結果、Aという人がX国の国籍を認められるが、Y国の国籍が認められない場合もあり、X国、Y国いずれの国籍も認められる場合もあり、逆にX国、Y国いずれの国籍も認められない場合もあります。

 そして、在日朝鮮人は、外国人登録上の表示が「朝鮮」であっても「韓国」であっても、共和国及び「韓国」のそれぞれの国籍法の適用があり、その結果両方の国籍の取得が認められます(共和国国籍法2条・5条、「韓国国籍に関する臨時条例」2条・5条、韓国国籍法1条)。その結果、在日朝鮮人は、共和国国籍と「韓国国籍」を併せもつことになります。

 つまり、在日朝鮮人は、共和国国籍と「韓国国籍」の2つの国籍をもっている2重国籍の状態にあることになります。しかし、これは通常の2重国籍とは違い、それぞれがもう一方の国籍の存在を認めていない特殊な状態といえます。

 外国人登録上の表示がどうであれ、すべての在日朝鮮人は原則として両方の国籍をもっていることになります。

 

高英毅弁護士

 コ・ヨンウィ 大阪市生まれ。東京大学卒業。在日本朝鮮人人権協会会員で同胞法律・生活センター相談員。連絡先=03−5818−5424