金正日総書記と鄭周永名誉会長が会見/工業団地造成で合意
金正日総書記と南朝鮮の現代グループ鄭周永名誉会長との面談が1日に行われた。また同日、朝鮮アジア太平洋平和委員会(ア太委)の金容淳委員長と鄭名誉会長が、工業団地の設置、運営の調査を開始する合意書(別項)に署名した。昨年10月、総書記との会見後、約3週間足らずで現代グループの金剛山観光が始まった経緯から考えると、今回の会見は、懸案だった工業団地造成のゴーサインとみなすことができ、今後の南北経済協力の活性化が期待される。(元英哲記者)
海州湾に工業団地
今回の鄭名誉会長の訪北目的は、平壌室内体育館着工式などの行事参加と(1)金剛山観光開発と(2)工業団地造成の合意書採択などだが、鄭名誉会長に同行した鄭夢憲同グループ会長によると、北と合意したのは、(1)南北バスケットボール競技を6ヶ月毎に南北で開催するほか、技術、機材、情報などの交流を行い(2)外国人と海外同胞の金剛山観光開始、金剛山ホテルの改修および運営(3)朝鮮西海岸工業団地の敷地調査および広さの確定などだ。
このうち最大の成果は、なんといっても工業団地に関する合意。
現代側が明らかにした工業団地のプランは、今後8年間に黄海南道海州湾一帯2000万坪(約6600万平方メートル)に3つの工業団地(800万坪)と、衛星都市(1200万坪)を建設し、22万人の南朝鮮勤労者が常駐する基盤施設を作る。
そして南朝鮮の850余の中小企業を誘致し、工業団地を輸出前進基地として育成する。まず第1段階として100万坪規模の工業団地を作り、そのうち30万〜50万坪は着工後、1年以内に完成させてモデル事業を開始するというもの。最終的に200億ドルの輸出効果を見込んでいる。
金容淳氏が年内に訪南
工業団地造成合意と並んで注目されるのが、ア太委の金容淳委員長のソウル訪問だ。鄭名誉会長が提案し、早ければ年内にも実現すると言われている。
南朝鮮では金容淳委員長を「朝鮮労働党の対南政策担当書記、北朝鮮の対南政策を総括する祖国平和統一委員会副委員長の肩書きを持つ対南政策の総責任者」(ハンギョレ新聞4日付)とみている。
現代グループがいくら南朝鮮屈指の財閥企業だとしても、南朝鮮の社会構造から考えると、当局の意に反することは不可能だ。となると鄭名誉会長の訪北および現代グループの一連の事業も当局の了解のもとに行われており、鄭名誉会長が当局者のメッセンジャーを務めていると見るのが自然だ。
鄭名誉会長は2度にわたって金正日総書記と会見しているので、金大中「大統領」が金容淳書記と会見する可能性もある。金「大統領」が置かれている現状況下では実現が難しいかもしれないが、「特使」的な役割は十分、可能だ。
政経分離の徹底や合意書の履行など今後、工業団地が実際に稼働するまで問題が山積していることも事実だ。
しかし今回の合意が、南北経済協力の新次元を開いたことだけは、間違いない。
ア太委と現代の合意書(要旨)
朝鮮アジア太平洋平和委員会(ア太委)と株式会社現代峨山との合意書の要旨は次のとおり。
(1)工業地区(工業団地)と、そこで働く勤労者の生活区域を創設、運用する(2)1999年10月中に工業地区創設と関連した実務協議を開き、工業地区の敷地調査、対象地域および面積の最終的な確認、その他、工業地区事業の円滑な運営のための諸事項を協議し、その履行のための実践的な措置を取ることにする。