私の会った人/吉永小百合さん
数年ほど前になるだろうか、平壌のTVで日本映画が放映されたというニュースが伝えられた。その映画が主演映画「キューポラのある街」だった。
早速、そのことを吉永さんに手紙で知らせると、すぐ、「みなさんの心を打つものをこれからも作り続けたいと思います」と書かれた丁寧な礼状が返ってきた。
同胞の間にも、世に言う「サユリスト」は、多い。「キューポラ…」で演じたジュンは、川口の鋳物工場で、貧しさにめげず、清く明るく生き抜いていく夜間高校生。ひたすらに、ひたむきに生きるその姿に、吉永さんのイメージを重ねている人も少なくない。
今年はデビューして、40年になる。110本近くの主演作。CM出演のギャラは1億円を越えると言われる大女優だが、その傍らでライフワークとして、原爆詩を朗読している。
地道に平和活動をしている市民や中・高校生や先生たちのリクエストに無償で応えて、反戦詩を朗読する姿に若い世代のファンも増えている。
私がお会いしたのは、101本目の映画「華の乱」に出演中の時だった。吉永さんが演じたのは女流歌人、与謝野晶子役。その晶子について「素晴らしい人だと思います。心からの叫びを歌で表わし、人の胸に切々と訴えたんですもの」とキッパリ。
インタビューの時、核兵器について「イヤなものはイヤ。人間として言わねばならないことは言わねば」と語った。美しさは外見ばかりではない。(粉)