それぞれの四季/「アジメ、アジメ」
金栄子(キム・ヨンジャ、看護婦、大阪府堺市在住)
昨年の春から、私は若いオモニたちが毎週1回、バレーボールの練習をしている間、子守りを担当してきた。もちろん初めは、元気印をかわれて、メンバーとして登場したものの、1回目でリタイア。そのまま、後方部隊で、子供たちから「アジメ、アジメ」と追いかけ回されている。
時には、オモニたちの人数の倍以上の子供を預かることもあり、パワー全開で立ち向かっている。オモニが練習を休みたくても、子供は「ノー」。オモニたち以上に楽しみにしてくれているのだ。
大きい子がオムツのとれていない乳幼児の世話をしたり、お茶を飲ませたりするのを見ると、本当に微笑ましい。小学校の体育館を借りているので、ピアノを弾いたり、走り回ったり…。冒険心を妨げないように、できるだけ大人は、横から見守っているようにしている。その姿を見ながら、ふと、小学生の頃、昼間はもちろん、夜も月明りの下、麦畑で鬼ごっこをしたことを思い出した。あの頃は、ガキ大将がいて、大きな子、小さい子を引き連れて、よく遊んだものだった。その中で、生きていく上で必要なルールを自然に身に付けた気がする。
少子化の時代。子供2人位の世帯が普通になっている。家でもたくさんの兄弟と一緒に遊ぶことはできなくなったし、路地裏に出ても、まず、子供の姿は見えない。
看護婦として、職場では、おじいちゃん、おばあちゃんと接する時間が多い。そんな日常の中で、「小さい友だち」とワイワイできるバレーボールの練習時間を、誰より楽しみにしているのは、実は私なのだ。