外国人人権保障/川崎市の意見書採択


住民一体の姿示す/行政動かした地道な運動

 神奈川・川崎市議会で1日、定住外国人の人権保障を求める意見書が全会一致で採択され、首相と法相ら関係5閣僚あてに送られた。

 同様の意見書は全国で、総聯各支部などから提出されているが、議会で採択までこぎつけたのは初のケースだ。これは、在日同胞の学ぶ権利、暮らす権利を守ろうと、地元同胞が繰り広げてきた地道な運動の成果と言える。

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 この結果は、地域共生の理念を掲げ、在日外国人の人権問題の解決へ尽力してきた川崎市という土壌を抜きには語れない。

 総聯川崎支部の李漢洙委員長も「県と市が一体となって、同胞の運動を支えてくれた。とくに、民族教育に対する市の協力的な姿勢は大きかった」と強調する。

 採択された意見書は、総聯川崎支部と傘下団体、学校が6月に行った陳情に応えたもの。内容は、(1)外国人学校卒業生の国立大受験認定と助成措置(2)無年金状態の高齢者などの救済(3)就労・住宅などの差別・人権侵害に対する施策推進など実行的措置(4)外国人登録証の常時携帯義務など外国人登録法見直しにあたる特別永住者への考慮――の4項目からなる。

 市議会では、朝・日関係が悪化する中でも、これらの問題に真しに取り組むことで、党派を超えて意見が一致した。

 市の支持を得たことは、同胞が抱える様々な人権問題の解決への弾みになった。地域と住民が一体となって意思表示をする姿勢を明確に見せたことは、大きな意義と言える。

 総聯川崎支部では、川崎初中と南部初級の両校に対する学父母保護者補助金の引き上げを求める陳情書を今年7月に、同胞高齢者団体「川崎高麗長寿会」への支援を求める要望書を同9月に、それぞれ市に提出しており、今後はこれらの補助を市の予算に組み込むよう求める運動が展開される。

 一方、先べんを切った川崎市の例を踏まえ、人権問題解決への動きが全国に波及することも期待される。 (柳成根記者)

 

在日外国人の人権問題に対する川崎市での主な動き

1986. 3 「川崎市在日外国人教育基本方針」を策定
95.10 私立看護短期大学教授会、国の要請に応じて、朝高卒業生の受け入れの見送りを決定
96. 2 神奈川県知事、川崎・横浜両市長が連名で、大学や看護婦学校養成所に朝高卒業生の受け入れを促す要望書を文相と厚相に提出。川崎民族教育推進協議会、私立看護短期大に決定撤回を求める署名運動を開始。2ヶ月で7万6000人以上の賛同を得る
私立看護短期大教授会、朝高卒業生の受検認可を全会一致で決定
12 外国人市民代表者会議を全国に先駆けて設置。在日朝鮮人を含む17国、26人の委員で構成
98.12 外国人学校卒業生の国立大学受験認可と外国人学校への助成を求める意見書を市長と市議会議長の名で国に提出
99. 6 総聯川崎支部と傘下団体、在日朝鮮人の人権保障を求める陳情書を、市議会議長に提出
10 市議会、総聯支部の陳情を踏まえ、定住外国人の人権保障を求める意見書を採択し、首相と法相ら関係5閣僚あてに送付