みんなの健康Q&A/糖尿病(3)合併症―腎症


全身がむくみ、体重が増える

しんクリニック 辛浩基院長

 Q 糖尿病による腎臓障害について教えて下さい。

 A 糖尿病の合併症の中で、最も注意しなければならないのが腎臓の障害(糖尿病性腎症、以下腎症)です。

 なぜなら、腎症が進行すると腎不全となり、生命にかかわるからです。腎不全になると人工透析療法を受けなければなりません。

 現在、全国で腎症により透析をしている患者は、全透析患者の約30%以上にも達しており、その数は年々増加しています。

 Q 腎症はどのようにして発症するのですか。

 A 腎臓には左右に約100万個ずつの細い血管の塊(糸球体)があり、糖尿病を放置すると、糸球体の構成成分である陰性荷電物質が減少し、さらに網目構造をした糸球体壁の網目が荒くなり尿中にたんぱくが出始めます。

 Q 腎症はどのように診断するのですか。

 A 膀胱炎などの他の病気がなく、安静時に尿試験紙で持続的にたんぱくが陽性であれば腎症といえます。この段階では、ある程度進行した状態です。現在、腎症を早期に診断する方法として尿試験紙でたんぱくが陰性でも、たんぱくより分子量の小さいアルブミンという物質を尿に見出し検査することができます。

 これは非常に大切な検査で、もし尿中に微量アルブミンが出ている段階であれば、血糖や血圧などをコントロールすることで微量アルブミンが消失し正常に戻すことが出来ます。

 Q 腎症が悪くなると、どんな症状が出るのですか。

 A 持続的に尿にたんぱくが出るようになり、その結果、血液中の総たんぱく量が減り(ネフローゼ症候群)、まず足がむくみ、さらに顔や全身がむくみ体重が増えます。さらに進行すると、肺に水がたまり呼吸ができなくなります。

 また腎臓の働きが落ち(腎不全)、尿が出なくなり「尿毒症」となり意識が薄れて、大変危険な状態となります。

 Q 腎症の治療について教えて下さい。

 A 腎症の進行の度合いによっても違いますが、なにはともあれ、まず血糖を厳格にコントロールすることが必要です。むくみなどの自覚症状が出る前から血圧や血糖を管理し、定期的に尿検査を受け、塩分やたんぱくのとり過ぎに注意した食事にするなど、日頃から腎臓に優しい生活を実行することが、糖尿病による腎臓障害を予防するうえで大変重要です。

(次回は合併症―神経症。東京都大田区西蒲田7−5−11、TEL 03−3738−1112)