えこのみっくナビゲーター/「電子マネー」がショッピングを変える?!
カードで買い物――現金いらず
ポケットの小銭をジャラジャラ鳴らす姿も見納め? 電子技術を使ってお金の価値をデータ化し、IC(集積回路)カードに収めることで、現金を使わずに買い物ができるという「電子マネー」が、実用化へのテスト段階に入っている。後払いのクレジットカードとは異なり、代金はICに記録された残高からその場で引き落とされ、プリペイドカードの感覚で使える。一部では実験的にサービスも始まった。現金に代わる新たな決済手段、電子マネーで、ショッピングのスタイルは変わるのだろうか。
クレジットカードと違うの?/ICに入金、その場で支払い
電子マネーとは文字通り、お金の価値が電子化されて数値で表され、ICなどの記録装置を介して、あるいはネットワーク上で決済するシステムを指す。
ICカードを使った電子財布方式や、ホームページでの通信販売を発展させたインターネット決済方式などの種類があり、このうち、消費者が小売店で実際に使う電子財布型が、現在、実験が進んでいるものだ。VISAとマスターのカード大手2社が開発を主導している。
キャッシュレスの「仲間」であるクレジットカードとは、現金を扱わない点では同じだが、代金の支払方法はまったく異なる。
クレジットカードは後払い用のカード。買い物の際、現金では支払わず、店頭でカードを提示する。代金は預金口座に入金し、商品を受け取った後、指定日に引き落とされる。
一方の電子マネーは、テレホンカードなどと同じ感覚と言えば、分かりやすいだろう。前もって、専用端末機で自分の口座からICカードに入金しておき、買い物の際にそのカードを提示する。カードに記録された金額データは現金と同じ扱いで、代金はその場で残高から引き落とされる。
使う人にメリットは?/少額決済に有効、小銭も不要
電子マネーの最大のメリットは、現金がなくてもショッピングができ、小銭を持ち歩いたり、釣り銭を受け渡す煩わしさから解放される点だ。後払いのクレジットカードとは異なり、サインも信用照会も必要なく、そのための通信費も掛からない。暗証番号の入力もいらない。
ICに記録できる金額は最大でも十万円程度に抑えられる見込みで、クレジットカードでは敬遠されがちな百円、千円単位の少額の買い物に向いている。この点、クレジットカードは使用限度額が高く、分割払いも利くため、高額の買い物にも適すが、反面、支払い能力を超えた使い方を続ければ、最悪、カード破産に陥る危険性も併せ持つ。
売る側にとっても好都合だ。現金を扱う手間が省け、釣り銭の数え間違いを防げる。深夜のコンビニエンスストアなどに多額の現金を置かなくても済み、強盗犯罪を防止する効果もある。代金が現金支払いと同じく即時決済のため、後払いに比べて資金の回収が早くなるという利点もある。
また、不正利用が難しいICの特性もある。クレジットカードはテレカなどと同じ磁気カードで、偽造・変造しやすい欠点を持つ。これを、技術的に偽造・変造しにくいICに切り換えることで、不正利用を防ぐ効果も期待される。
実用化へ進んでるの?/郵政省・銀行軸にテスト活発
日本では現在、電子マネーの実用化に向けた実験が着々と進められている。
郵政省が98年2月から、郵便貯金のATM(現金自動預入・引出機)を利用した「郵貯ICカード」の実験を、埼玉県大宮市で行っているほか、同年7月には、銀行など46社が参加し、東京・渋谷で「VISAキャッシュ」の実験もスタートした。
さらに新宿では、NTTと24の銀行の共同プロジェクト「スーパーキャッシュ」の実験が今年4月に始まった。特別製の公衆電話で、預金口座からICカードへの入金ができ、約1000店で買い物ができる。来年5月末までに10万人のモニターが動員される。
一方、すでに始まっているサービスもある。郵政省と富士銀行が開発し、今年1月から実用化された「デビットカード」だ。西武百貨店、ローソン、ビッグカメラなど16社で使える。124の企業と916の金融機関が参加し、来年3月から本格展開される。
デビットカードはいわば「簡易型電子マネー」。ICを使わないので電子マネーとは区別されるが、要領は一緒。郵貯や銀行のカードをそのまま買い物に使い、代金は店頭の専用端末機で口座からじかに引き落とす。カードを新たに作ったり、ICにデータを入れる手間が省け、より手軽に買い物ができる仕組みだ。