生活時間――オモニの1日
「ムジゲの会」会長 申桃順さん
周りの人の支えが励みに
初級部1年の次男で、ダウン症の子と共にがんばる、東京・足立区に住む申桃順さん(37)は、人一倍多忙な日常をおくっている。初級部3年の長男(9)、保育園の年長児の長女(6)と、子供たちにもまだまだ手がかかる。
朝6時過ぎに子供たちを起こし、3人の食事、支度を済ませ、7時半には、区内の朝鮮学校に通う上の子2人を通学バスに乗せる。掃除、洗濯などの家の用事を八時半までに手早く済ませ、近所の保育園に下の子を預ける。
急いで家に戻って、パソコンに1時間程向かう。
「障害者らの親たちが作っている『ムジゲの会』が、2ヵ月に1回発行している会報を、毎日この時間に、少しずつ作っている。締切り間際にあわててやると、追いつきません」。10時前にバイクで弁当屋のパートに出る。配達にはバイクが必需品だと言う。
午後四時頃に帰宅。5時には、次男と長女を学童と保育園に迎えに行く。車で約50分かけて、長男が通う豊島区のサッカークラブに迎えに行き、帰ると7時。朝、基本的には夕食の準備もしていくので、30分後には、夕食。子供たちは、お風呂に入って、9時には就寝。ただし、木曜日は、オモニバレーの日なので、午後7時には家を出て、足立の朝鮮学校へ。その後は子供たちが、仲良く留守番をしている。
土曜日は、子供連れで、夕方から東京朝高へ。今度はオモニのバスケットの練習だ。体育館で子供たちも遊びながら時間を過ごす。
申さんが寝るのは、だいたい夜2時を回る。マージャン屋を営む夫の白仁芳さん(46)の帰宅もその頃。「子供が寝た後、夫が帰るまで、またパソコンに向かいます。『ムジゲの会』の会員同士の通信事務にいつも追われている」。
障害者を見る社会の目は、厳しいものがあるのも現実。「私も学生時代、障害児をからかう友人を止められなかった。わが子がそうなって初めて気づいたことも大きい。めげないで、障害者を普通に理解し、受け入れてもらえるよう訴えていきたい」と語った。バイタリティーと明るさが、周りの人たちに力を与え、共感を呼んでいるようだ。
女盟葛飾支部専任 金蓉子さん
夫の協力欠かせない
東京都墨田区に住む女性同盟葛飾支部の専任活動家金蓉子(36)さんも「育児、主婦業、仕事の 三輪車 を必死にこぎ続けている」。4歳と2歳の2児を抱えて働く毎日である。
朝6時に起きて、洗濯機のスイッチを押し、朝食の支度をして、7時30分には家族みんなで食卓につく。朝食を済ませると2人の子の保育園の支度、茶碗洗い、ゴミ出しと目まぐるしい時間がアッという間に過ぎる。8時には専任活動家の夫の李鐘鳴さん(41)が出勤。ごみ出しは夫の役目。
8時50分頃には、2歳と4歳の子を2ヵ所の保育園に連れていく。自宅から保育園までは自転車。預け終るのに約25分ほど。
葛飾支部は、さらにそこから自転車で20分ほど。今は子供が小さいため、4時30分には事務所を後にする。多忙な時には、子供を保育園に迎えに行った後、事務所に戻る。
買い物は、子供を迎えた後、5時30分過ぎになる。生協も利用しているので、買い物は2日に1回。夕食は7時半から1時間ほど。入浴後、子供たちの就寝時間は9時30分を回る。添い寝をしながら、2人に本を読んでやるのが日課。
「ああ、このまま眠れたら何て幸せかしら」と思うことも。
起き出して翌日の支度や保育園の連絡帳の記入、新聞を読んだり、読書をしたり。学生時代から親しんだ絵を、時には朝方の3時頃まで描き続けることもある。夫が帰宅するのは終電ギリギリの時間帯だ。
「本当に慌ただしい毎日だ。日曜の仕事の場合、夫に子供をみてもらったりして、協力は欠かせない」
朝鮮大学校 姜末玲助手
助け合いネットワークを
朝鮮大学校体育学部・助手(学校保健学)の姜末玲さんに、2人の「生活時間」の感想を寄せて貰った。
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私も生後4ヵ月の子供を持つ 新米ママ です。
「子育てはオモニの役目」というのは、現代社会ではナンセンス。忙しい中でも、短い時間にできる限り、アボジとのふれあいを持つのが、子供の精神の発育にプラスになります。同胞社会でも、子育てへのよりアクティブな父親参加が求められると思います。
障害児と共に、奮闘する申桃順さん、共働きの金蓉子さんの「生活時間」を見て、バイタリティー溢れる姿に頭が下がります。
子育てなど家庭での「ケア機能」は、省力化、合理化が難しい。外の社会では、合理化が進んでも、家庭の中はまだまだ、昔ながらのリズムで動いています。互いに助け合うネットワークなどがあればいいですね。
生活時間の記録お寄せ下さい
仕事、育児、家事に加えて、家族の高齢化、介護の問題がズッシリと女性の肩にのしかかっている。同胞女性をめぐる状況の変化を、それぞれの「生活時間」を通して考えてみたい。そこから現代の同胞女性の暮らしが透けて見えるからだ。是非、1日の「生活時間」の記録をお寄せ下さい。TEL 03−3268−8583(「女性・家庭欄」へ)