99年度焼肉店経営集中講座/清水均氏の講演から(上)


 「焼肉業は経営者が現場を知り、すべてを仕切ってこそ成り立つ。ここで成功すれば、ほかの商売でも失敗しない」――。1999年度朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座(10月19〜20日)の開講式で、商工連の梁守政会長は参加者をこう激励した。実際、講師の経営コンサルタントらが示した、経営者の課題は多岐にわたる。その要旨を連載する。今回は清水均氏の「生き残りをかけた朝鮮料理店経営」。

 

「値打ち」探しにどう対応/自店の 使われ方 を明確に

商圏

 飲食業は立地産業と言われる。建てた店は動かすことができず、同じ場所で勝負し続けねばならない。お客が集まる範囲は、いくら美味しくても40分か50分の距離で、ほとんどが30分以内。1回の客単価はせいぜい3、5000円だ。

 すなわち、同じお客に繰り返し来てもらわなければ、商売は成り立たない。実際、店の売上の8割は、全体の客数の2〜3割に当たる固定客が支えている。

 それゆえ、地域密着が大切だ。ヘビーユーザーに適切なサービスを提供するために、お客の顔と名前を覚えられるかということだ。

適正価格

 お客はこの厳しい時代に、限られたお金をどう使おうかを考え、何か「値打ち」のある物を探している。

 だから、適正価格も変わって来てる。

 ある中華ファミリーレストランチェーンは、客単価が1400円だった。内容は、平均で400円程度の品を1人で3.5品、2人なら7品注文していた。

 それを昨年、メニュー価格を調整し、1人当たり350円を四品注文できるようにした。これだと、2人連れのお客なら、以前と同じ出費で1品余分に注文できる。

 お客に「買い得」と思ってもらうためには、何より工夫が必要だ。

 チゲや石焼ピビンバなどは単価も高めで分量的にも多くなりがちだ。それを、メニューに「焼肉といっしょなら2〜3人でも十分な量です」と書けば、お客に買い得感を与えられる。

コンセプト

 ただし、これらの店造りの前提として、明確なコンセプトが必要だ。

 自分の店は、どういう客が、どういう生活の場面で、誰といっしょにいくらぐらいで楽しむ店なのかを、はっきり思い描くということだ。

 主な対象は家族連れなのか、接待やデートなのか。お客は、それぞれの店に対して明確な位置付けを持ち、使い別けているものだ。

 コーディネートするうえでも、必ずしも金をかければいいというわけではない。お客が店に入ってから出るまで、雰囲気、味、価格、サービスと、店のコンセプトに見合った一つの世界が、店内に作られているべきなのだ。(つづく)