本の紹介/失敗の本質 戸部良一 ほか共著


 第2次世界大戦において壊滅した日本軍。本書のねらいは、この歴史的事実を組織としての日本軍の失敗としてとらえ、現代の組織一般にとっての教訓として活用することだ。

 前半では、「ノモンハン」「ガダルカナル」「インパール」など、敗北の代名詞とも言える6つの事例を徹底的に検証している。

 朝鮮を侵略した敵の話とは言え、「能否を超越し国運を賭して断行すべし」などの決まり文句のもと、自殺行為を重ねる非合理性、無計画性、迷走ぶりには、組織がここまで理不尽になれるものかと、空寒い思いがする。

 分析の章では、あいまいな戦略、ムード主体で科学的思考を苦手とする組織風土、綱領にしばられ貧困化する想像力、自由な論議を許さず情報を共有できない体質などなど、病理の正体に容赦なくせまっている。

 ここで示されているのは、まさに必然的敗北のシナリオだ。本書はそれを反面教師に用いた、失敗学の勧めといえる。(中公文庫・413ページ・税別738円)

 ◇とべ・りょういち 1948年生れ。防衛大学校教授