みんなの健康Q&A/糖尿病(4)合併症―神経症


手足がしびれ、感覚が鈍る

しんクリニック 辛浩基院長

  糖尿病合併症の1つ、神経障害の症状を教えて下さい。

  糖尿病による高血糖のため、末梢(まっしょう)神経や自律神経が障害され、主に末梢神経の障害が比較的早期に現れます。

 典型的な症状としては、手足の末端、ちょうど靴下や手袋で覆われる部分のしびれや痛み、足の裏に薄紙が貼りついたように感覚が鈍ったりします。時々、足のふくらはぎがこむら返えりを起こしたり、つったりもします。

 それが徐々に足先から膝へ、手先からひじへと体の中心に向かって広がります。

 自律神経の障害としては下痢や便秘を繰り返したり、立ち上がった時に急に血圧が下がりめまいや動悸を起こしたりし、膀胱(ぼうこう)の働きが落ち、膀胱内に尿が残ったり、男性では勃起不全になったりします。このように、様々な形で全身の症状が出やすくなります。これらを糖尿病性神経症(以下、神経症)と呼んでいます。

  どうして神経が侵されるのですか。

  高血糖により神経細胞の中にソルビトールという物質が蓄積され神経細胞が壊わされ、また神経への細い血管の血流が悪くなり、酸素や栄養が行きわたらなくなり神経症が起こるといわれています。

  どのように診断するのですか。

  まず第1に、指先や足先のしびれなどの臨床症状で判断し、診察上、膝蓋腱(しつがいけん)、アキレス腱の反射が低下したり消失しているかを診断します。さらに神経伝導速度や自律神経の検査として心電図R−R間隔や残尿を調べる膀胱機能検査などを行って診断します。

  神経症が進行すると、どうなるのですか。

  足先の感覚や痛みがまったく消失し、靴ずれなどの傷から感染を起こし、足先の血流も悪いため簡単に壞疽(えそ)を起こし、悪化すると指や足を切断しなければならなくなります。感覚がなく足に大火傷をしたりします。

 また狭心症や心筋梗塞を起こすと激しい胸痛を感じますが、神経症のためにまったく胸痛を感じず(無痛性心筋梗塞)、放置されやすく突然死の原因になります。

  ほかにどのような合併症がありますか。

  糖尿病の特徴である細い血管の障害以外に、太い血管も障害を受け、動脈硬化を起こし、脳梗塞、心筋梗塞、壞疽などが出現しやすくなります。脳梗塞を起こした人の約半数、心筋梗塞では約3分の1の人が糖尿病患者だと言われています。

(次回は治療法。東京都大田区西蒲田7−5−11、TEL 03−3738−1112)