日本政府、直行便の運行再開発表/対話路線の転換?
日本政府が2日、日朝直行チャーター便の運航凍結解除を発表した。今回の措置については「北朝鮮の軟化を確実なものにするため、日本側も対話路線を前面に打ち出す必要があると判断したため」(読売新聞4日付)との指摘があるが、朝米関係の進展に、日本政府が朝・日会談再開へ動き始めたと見るのが自然だろう。
圧殺政策放棄への一歩?
昨年9月、日本政府が朝鮮の人工衛星発射に対抗してとった制裁措置というのは、(1)朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)への資金協力停止(2)チャーター便運航停止(3)国交正常化交渉の見合わせ(4)食糧援助の凍結の4項目だった。このうち(1)については制裁措置発表からわずか1ヵ月半後の10月21日にKEDO決議書に署名し、今年5月3日には資金供与協定に署名した。
(3)と(4)については制裁実施当時、すでに朝・日政府間交渉が中断状態にあったし、食糧援助についても行われていなかった。したがって今回の直行便運航再開は、日本政府が人工衛星発射に対して行った制裁措置の事実上の撤回とみなすこともできる。
今回の制裁措置撤回は、朝・日関係改善に一応、肯定的な影響を及ぼすものと考えられる。朝鮮政府が8月10日付の声明で求めていた対朝鮮圧殺政策の放棄につながるからだ。かといって日本が、対朝鮮政策を根本的に転換したわけではない。この辺を正確に見極める必要がある。
米政府の圧力認める
チャーター便の運航再開について日本政府は、村山富市元首相を団長とする訪朝団を派遣する際に発表する意向だったと伝えられていた。その計画すら具体化しないまま解除を発表せざるを得なかった背景には、朝鮮半島を取り巻く情勢の変化がある。
まず第1に朝米関係の進展。米国の対朝鮮制裁措置の一部緩和(9月17日)によって朝米関係は、これまでの敵対関係から国交樹立に向けた関係へと大きくシフトし、年内にも連絡事務所が開設されるという観測まで流れている。
ソウルで3日に受信されたボイス・オブ・アメリカ放送は「日本政府消息筋は、15日からベルリンで開かれる朝米会談に先だって対朝鮮制裁措置を解除しろという米政府の圧力があったことを是認した」と伝えた。
次にシンガポールで先月18日から20日まで行われた朝・日非公式接触。日本政府関係者によると、「北朝鮮側は、過去への謝罪など従来の主張は展開したものの、日本との関係改善に前向きな姿勢も見受けられた」(読売新聞前述)という。
謝罪と補償がテーマ
今後の朝・日関係において注目されるのは、村山訪朝団がいつ派遣されるかだろう。同訪朝団が閉そく状況にある朝・日関係を打開するうえで大きな役割を果たすだろうということでは異論がない。
ただ、93年11月の会談中断以来、これまで自民党の渡辺美智雄元副総裁(故人)や森喜朗総務会長(現幹事長)や、自民、社会、さきがけの連立与党代表団が訪朝したにもかかわらず関係を進展させることができなかったという経緯があるだけに、村山訪朝団の派遣は慎重にならざるを得ないのだろう。
要は謝罪と補償という朝・日間に横たわっている原則的な問題に日本側がどのように答えるかである。
今年3月、シンガポールで局長級の朝・日非公式接触が行われた際、日本の外務省幹部は「北朝鮮が本当に経済復興を考えるなら、日本の協力が必要不可欠。そこに必ず接点があるはず」(産経新聞4月1日付)だと漏らしていた。崩壊寸前の朝鮮がいずれ日本に経済援助を求めて妥協するだろうとも受け止められる発言だが、日本政府がこうした姿勢を崩さない限り、朝・日関係の進展は期待できない。
米国が朝鮮の崩壊を前提にした政策を放棄したという事実をしっかりと見つめる必要があるのではないか。そういう意味で朝・日関係改善のボールは、依然として日本側にあると言えるだろう。(元英哲記者)