国連規約人権委、保安法廃止を勧告


 先月22日からスイス・ジュネーブで開かれていた国連自由権規約委(規約人権委員会)が4日、南朝鮮当局の「人権状況報告書」を発表し、この中で「国家保安法」(保安法、別項参照)の廃止を強く勧告(別項)した。保安法について廃止を勧告したのはこれで3度目。国連自由権規約委の勧告そのものに法的な拘束力はないが、保安法に関連する訴訟や政策決定の基準となり、南朝鮮で現在、進められている保安法改正作業にも影響を及ぼすと見られる。

 

不誠実な南当局の態度

 国連自由権規約委が勧告したのは、一言で保安法は国連人権規約に反するので至急に改正せよという内容。保安法以外にも当局による盗聴の規制、デモ・集会の自由保障、順法誓約書(思想転向強要の一手段)の廃止など23項目にわたって人権状況の改善を求めている。

 国連人権規約というのは、第3回国連総会(1948年)で採択された世界人権宣言を条約化したもので、66年の第22回総会で採択された。「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」(A規約もしくは社会権規約)と「市民的および政治的権利に関する国際規約」(B規約もしくは自由権規約)があり、南朝鮮は90年に加盟、批准した。

 自由権規約の締約国政府は5年に1度、規約の順守状況に関する報告書を国連自由権規約委に提出し、国連自由権規約委はこれをもとに締約国政府と議論しながら審査を行うことになっている。これに従って南朝鮮政府は第2次報告書として91年1月から95年12月分を提出した。

 しかし国連自由権規約委の今回の報告書は、「南朝鮮政府が条約履行に対する十分な資料を委員会に提供しなかった」「報告書審議過程で委員が提起した諸質問に対して南朝鮮政府がまともに答弁しなかった」と非難している。

 

遅々として進まぬ改正

 国連自由権規約委は、昨年10月と今年2月にも保安法が自由権規約に違反していることを南朝鮮当局に通報し、是正を勧告したことがある。いずれも保安法による人権侵害の救済申し立てに対する決定で、南朝鮮政府に金銭的賠償を含む救済措置を講じ、その結果を90日以内に通報するよう求めていたが、南朝鮮当局が救済措置を講じたという報道は、いまだになされていない。

 今年8月15日の演説で金大中「大統領」は保安法の改正を明らかにした。

 その後、与党「国民会議」を中心に改正作業が行われているが、報道された内容によると、いくつかの字句を修正するという水準で、具体的には第2条1項の「政府を僭称(せんしょう、勝手に身分を越えて上の称号を自称すること)し、国家の紊乱(びんらん、みだすこと)を目的とする国内外の結社もしくは集団」(反国家団体の定義)という条文の「政府を僭称」部分と第7条5項(利敵表現物の製作、配布、運搬罪)を削除するという内容。ちなみに「反国家団体」というのは、朝鮮と朝鮮総聯を指している。

 

署名、座り込み運動

 国連自由権規約委員会における南朝鮮当局の不誠実な対応、これまでの国連自由権規約委勧告に対する黙殺、検討されている改正内容など、以上を総合すると、南朝鮮当局はあくまでも保安法の存続をはかり、国際的な非難を交わすために保安法改正のポーズをとっているという結論に達する。

 しかし、南朝鮮では9月末に「国家保安法撤廃汎国民連帯会議」と「国家保安法反対国民連帯」という全国的規模の組織がそれぞれ発足し、22万7000余人の署名を「国会」に提出(2日)したのをはじめ、各地で座り込みなどを繰り広げており、今回の勧告を機に運動がさらに盛り上がることは必至だ。(元英哲記者)

 

国連自由権規約委員会の報告書(抜粋)

 「南北対峙状況の特殊性を勘案しても国家保安法の段階的廃止が必要だ」「南朝鮮政府は分断によってもたらされる超法規的な問題を取り扱うために保安法が使用されていると主張しているが、保安法は国際規約と両立しえない拘禁、調査、特定の刑罰などと関連した特別な規則を作るために使用されている」「7条の反国家団体称賛はその処罰範囲が不合理的に広範囲におよんでおり、国家安保のために必要な程度を越えている」「7条が自由権規約19条(意思表現の自由)の要件を満たしておらず、ひいては意思表現が偶然に利敵団体の主張と一致したり、またはその団体に対する同情心の表現に至る場合まで処罰しており、規約で認める制限の範囲を超えている」「南朝鮮政府は自由権規約に符合するよう7条を緊急に改正すべきだ」

「国家保安法」

 1948年に日本の「治安維持法」をモデルに作られる。80年に「反共法」を吸収した現行法は91年に改正された。第1章総則(目的、反国家団代の規定)、第2章罪と刑、第3章特別刑事訴訟規定、第4章補償と援護(全25条)で構成されており、「反国家団体」を構成(3条)したり、同調、称賛、鼓舞(7条)し、またその事実を知っていて告知しなければ「不告知罪」(10条)で、最高死刑に処するとなっている。